第22章 林間合宿 3日目※
捕縛布を振り解いた男は、攻撃するわけでもなく逃げるわけでもなく背中を丸めながら立ち尽くしている。
なんだ?様子がおかしい。
「さすがに雄英の教師を務めるだけあるよ。なァ?ヒーロー。」
「...は?」
「生徒が大事か?守り切れるといいなァ?」
俺に振り返り余裕そうな笑みでそう言う男をもう一度捕縛布で捉えた。が、こちらへ引き寄せようとした身体は一瞬にして溶けてなくなり捕縛布をすり抜けた。
コイツの個性か?いや、さっきの発火が個性じゃないのか?
目の前には男の姿は跡形もなくなり、泥のようなものがあるだけだった。
くそッ......考えてる余裕はねぇ。
「先生!今のは!?」
「施設の中に入っとけ!すぐ戻る!」
峰田たちがこちらへやってきたが生徒らの横を通り過ぎて森の中へ走る。
──生徒が大事か?
走りながら、さっきの男の言葉を思い出す。あの言いぐさは完全に生徒がターゲット。なら生徒らに自衛の術を。はやくマンダレイに伝えてもらわねぇと。
生徒らとプッシーキャッツが肝試しをしていた広場へ走る途中、突然上から何かが降ってきた。
人だ。
チッ
次から次へと邪魔が入るな。
俺の前を立ちはだかるヤツを見る。身長は生徒くらいか。華奢な体格だ。子供か?俺はそこですぐに顔につけている仮面に既視感を覚えた。
「......お前、USJの時の...」
この仮面女、USJ襲撃の時にもいたヴィランだ。
まだそう遠くない記憶を手繰り寄せた。
この仮面女とは一度対峙している。他のヴィランとは違って手強かったやつだ。
......クソ
今は一刻でもはやくマンダレイの元へ行きてぇところだが
やるしかねぇ。
俺は目の前の仮面女から視線を外さずに戦闘態勢をとった。