第22章 林間合宿 3日目※
いつから目開けてた?至近距離でバッチリ目があった事を恥ずかしく思うより前に、口の中の違和感を感じた。
自分の口の中でカラン、コロンと音を立てて確認する。
あ、ビー玉がある。
『あ......取った!!ミスター取ったよ!!』
口を小さく開けて中のビー玉を見せた。
「へえ。やるじゃないのちゃん。」
とくに驚く様子もなく唇はやんわりと弧を描いている。もっと悔しそうな顔してもいいのに、と思いながらミスターを見る。
『はやく、コレ解除して?』
「そうだなぁ。頑張ってたちゃんには、ちゃーんとご褒美やらねぇとなぁ?」
...ご褒美?
ミスターの言い回しに違和感を覚える。私が聞く前にミスターが自分の顔の前に手を持ってきて、指を鳴らすポーズをとっていた。
待って、口からビー玉出すから。と私の口からその言葉が出る事なくパチン、とミスターが指を弾いて軽快な音を鳴らした。
私の口の中に未だにある異物を転がしながら、睨むようにしてミスターを見る。
『っ、ミスター!!!騙したね.....?』
「俺はアレに洋服を圧縮した、なーんて一言も言ってないけどなぁ」
指が鳴るまで、このビー玉に私の服が圧縮されていると信じて疑わなかった私。確かに見せられたビー玉に洋服が圧縮されているなんて一言も言ってなかったのに。
今私の口の中にあるのは、形も大きさも感触も先ほどのビー玉とほとんど変わらない。変わったのはコレに甘い味がついた事。ただの飴玉だった。
「ちゃんがいきなりそんな姿になるのが悪い。」
クツクツと笑いながら、ポケットから再び水色のビー玉を取り出し指を鳴らすと今度こそ出てきた私の洋服。
『もう......超時間の無駄だったじゃん...』
手渡しされた洋服に着替えながらこちらをニヤニヤと笑いながら見ているミスターを睨む。
「時間の無駄?ハハ、まさか。ちゃんが必死に俺にキスしてくる顔が見れたから超有意義な時間だった」