第21章 林間合宿 2日目
「.........何してた。」
『...っっ!』
俺の声を聞くなり、肩を大きく揺らして驚く
質問に対して返事がこない。
「もう一度聞こうか、外で何をしてた」
『別に何も。眠れなかったので、外に出ただけですよ』
微笑を浮かべたまま、淡々と答える。彼女の強く宣言するかの物言いは、真実を隠すためとも思える。
「話してただろ、誰かと。」
注意深く見ていなければ分からないほどの変化だったが一瞬、ほんの一瞬だがの眉が不愉快そうに歪んだ。その顔はこれ以上踏み込んでくるなと言いたげな顔にも見える。
『話す?誰と?私携帯持ってないし───』
吐き捨てるように言いながら掌をヒラヒラ見せたあとに、着ている洋服に手をかける。
確かにコイツは携帯電話を持たないっていつかのバスの中で言っていたな....
じゃあ、さっき見たのは...
『けどそこまで疑うなら、私の身ぐるみ剥いで怪しい物持ってないか探してみますか?』
まるで勝ち誇ったかのような顔でそう言い、シャツの裾を捲り上げた。余裕があるのかこちらを見透かし、試している雰囲気すらあった。そんなコイツの雰囲気が俺に杞憂に過ぎないと思わせる。
「......おい、やめろ。......引き止めて悪かった。」
捲った裾から引き締まった腰が見えて、ついから顔を背けた。だから、その瞬間が口端を吊り上げ妖しく笑っていた事に俺は気づけなかった。
『じゃあ私、お部屋戻りますね。』
「あぁ。」
俺の横を通り過ぎるの表情を無言で窺う。が彼女の表情ない顔つきからはなにも読み取れない。
が通り過ぎた瞬間に小さく風が吹いた。普段ならそんな事は気にしねぇが、人間こういう時は些細な事でも敏感に反応しちまうらしい。その小さな風が俺に纏わりつく。悪魔が俺の背中に寄り添って、頬擦りしているようなそんな悪寒が走った。
彼女の気配が消えた後で外に出た。アイツが立っていた場所を隈なく探す。が、怪しい物は何も落ちていない。
俺の勘違い、か。
施設の中へ戻ろうとガラス扉に手をかける。ふと視線が入口の蛍光灯にいく。蛾や羽虫が集まっているのが文字通りの虫の知らせにも感じられた。
つまり、不吉だった。