第21章 林間合宿 2日目
そして目の前に立つ私と目が合うと、ニヤリと悪い笑みを浮かべた。
「おい、小豆女ァ!!てめぇ、威勢のいいコト言ってたァ割にはこんな初歩的なもんも出来ねぇんか?俺に出来てテメェは出来ねぇ。つまりどういう事か!俺ァてめぇより先にいる!イコール俺の勝ち!Q.E.D.!」
得意げな顔で一方的に私を捲し立てた後に、立てた親指を真下に向けるかっちゃん。
おー、怖い怖い。
こんなところまで張り合ってくるのかこの男は。
「かっちゃん、それは大人気ないわー」
私たちの横を通り過ぎすがりに呆れたように呟いた上鳴くん。
「わりーな。あんま気にしないでやってくれ」
洗い終わった食材を運んできた切島くんが、白い歯を見せ笑いながら言った。
その後もあーでもないこーでもないとかっちゃんに言われながらも、私はひたすら食材を刻んでいった。
夜ご飯も食べ終わり、食器を片付けてるとカレーライスの入ったお皿を持ってどこかに行こうとするデクくんの背中を見つけた。
彼なら何か知ってるかもしれない。
怪しまれない程度に、やんわりと聞いてみる事にした。
『待って、デクくん。どこいくの?』
「あ、さん。これね、洸汰くんのところへ持っていってあげようかなって。」
『洸汰...?だれそれ』
「ええっ、あの子だよ。マンダレイと一緒にいた男の子。」
あぁ、そういえばそんな子供もいたような。
『そうなんだ。....そういえばここに来てからオールマイト見た?体術について聞きたいことあったんだよね。』
デクくんならオールマイトが不在の理由を知っているかもしれないと思って咄嗟についた嘘。
「ヴィランに動向を悟られないように、人員は最低限なんだって。あとはオールマイトは、ヴィラン側の目的の1つと推測されているから...って相澤先生が言ってたよ。僕もオールマイトに聞きたいことたくさんあったから残念だよ...。」
『そう、なんだ。ありがとうデクくん。』
ほお。よく分かってるじゃん。さすが雄英。
心の底からガッカリしているデクくんの背中を見送った。
「くん!サボってないで手を動かしたまえ!明日も早いんだ!さっさと片付けて明日に備えるぞ!」
『はーい』
私を呼ぶ委員長の声に、何をやるにも全力なんだなと心の中で呆れながらも自分の持ち場に戻った。