第20章 林間合宿 1日目※
手渡しされたペットボトルを受け取ると、イレイザーヘッドは近くにあった横長の椅子に腰掛けた。
隣座っていいのかな。
そう思いながらも1人分開けて、イレイザーヘッドの横に腰掛けた。
「......お前、そういうのはあんまり人前で見せるな。ウチの男どもに見られたらうるせえぞ。」
『え......?』
イレイザーヘッドの低い声が聞こえた。口に付けようとしたペットボトルを膝に置き、隣に座るイレイザーヘッドを見るが真っ直ぐ前を見たままこちらを向かない。
「ん...」
前を見たままのイレイザーヘッドが自分の首筋を指でトントンと軽く叩きハッとする。
身体を冷まそうとキャミソールだけだった私はすぐに、バッグからパーカーを取り出して羽織った。
「......芦戸と葉隠が、は俺につけられた、と言っていたが.....」
『え、私そんな事言ってな......あっ...。』
記憶を辿りながら考える。
脱衣所で芦戸さんに、イレイザーヘッドに見られたかもって言葉を変なところで遮られたから....。勘違いされたんだ。
『いや....、もしかしたら相澤先生に見られたかもって無意識に言葉に出ちゃって...。それを芦戸さんが勘違いしたのかと....』
どうしてこんな事いちいち説明しなきゃいけないのか、と思いながらもワケを話した。
「そうか。」
そう言うと持っていた缶コーヒーに口をつけクイッと傾けると、イレイザーヘッドの喉仏がゆっくり上下に動く。普段生気を感じさせないこの男から初めて人間らしさのようなものを見た気がしてつい笑ってしまった。
『ふふッ』
「なんだよ」
『当たり前だけど、先生も人間なんだなぁって。フフッ』
長椅子の上で三角座りになり膝を抱えて、首だけイレイザーヘッドの方へ傾けた。
「お前は俺をなんだと思ってる」
なに、ねぇ...
なんだろう。
ヴィランとヒーロー....
『んー、.....いつか倒す相手、ですかね。』
間違ってはいない。
「はっ...お前が俺に勝って超えると?」
冗談と捉えているのか何も疑わずに微笑するイレイザーヘッドに同情すら感じる。
『実際、勝ったじゃないですか私。』
「アレは錘ありきだろ。調子に乗るな。もう寝ろ。」
『はーい』
立ち上がるイレイザーヘッドに続くようにして私も部屋へと戻った。