第20章 林間合宿 1日目※
「よぉ、」
『......私の目おかしくなったのかな、上に荼毘がいる気がする。』
「安心しろ、正常だ」
『ちょ......ッ...なん...で...』
その声が私に、木塀の上で荼毘がしゃがんでいる、現実なのだと突きつけてくる。慌ててだらしなく伸ばしていた足をチャポンと水飛沫を立てながら元に戻して、片手で胸を隠し、身体ごと荼毘の方を向く。
自分の唇の前で人差し指を1本立てて内緒な、と意味ありげに笑う荼毘。そんな荼毘の姿にドクンと鼓動を打つ。
いやいや、ドクンじゃないよ。
ここ女子風呂だから...!
『ねえ......なんで、ここに荼毘がいるの......!』
隣の男風呂からはいつの間にか声は聞こえなくなっていた。
けど無意識に小声になってしまう。
「なんでって、お前の風呂覗きにいくって言ったろ。つか、やっと1人になったなァ」
この男は覗きをなんだと思っているのか。当たり前のように言う荼毘に清々しさすら感じる。
そしてこちらが小声で話してるのにも関わらず、いつもの声量で話す荼毘に肝を冷やし今度は私が自分の口の前で人差し指を当てた。
そういえば、そんなことも言ってた気がするけど。まさか本当に来るなんて思わないじゃん...。
木塀からストンと飛び降り、岩風呂の縁に近づいてくる荼毘。
『あ......やっと、って事はずっと見てたの......!?』
「大丈夫だ、お前の裸以外興味ねェ」
『そういう事じゃ...ッ...いッ.....!...たい.....!』
岩風呂の中で慌てふためく私の腕を持ち上げ、いとも簡単にお湯の中から出されて荼毘と木塀の間に立たされた。荼毘に全身何にも身に付けてない状態を見られるのは初めてで、胸の前で腕を交差させ顔を背けてしまう。
『ッやだ......だび...みないで......』
「隠すなって」
両手首は私の頭上で纏められ、荼毘の手によって壁に縫い付けられた。静かな夜に岩風呂の湯口からお湯が流れる音だけが響く。
「さて問題──」
『へ.....ッ...』
私の耳に唇をピタリとつけ、耳心地のいい荼毘の低音が静かに鼓膜を揺らす。こんな状態でそんな言葉が出ると思わなくて素っ頓狂な声が出た。
「まだなーんも触ってもねェのナカはどうなってるでしょう」