第20章 林間合宿 1日目※
露天風呂は、ぐるりと木塀で囲われていた。男女で真ん中で区切るように、竹垣が1枚あるだけで会話は筒抜けだった。隣の男の子達の会話が丸聞こえなのだから、こちらの声も全部聞こえているだろう。
露天風呂にみんなで浸かりながら色々なことを話した。
林間合宿終わったらみんなで遊びにいきたいとか、恋愛の話だとか、この前ヒーロー活動してたプロヒーローがかっこよかった、だとか。どれも自分とは無縁な話で、特に話に加わるわけでもなく首を振りながら聞き流していた。
この林間合宿が無事に終われば、いいんだけどね。なんて何も知らない生徒たちを皮肉めいた眼差しで見た。
「あ、そういえばウチら生徒の入浴時間って決まってなかったっけ?」
「ケロ、もうそろそろ出たほうがいいかしら」
「いい湯だった〜明日も頑張れそうやわ〜」
入浴時間なんて決まってたっけ?
『私はもうちょっと、温まってから出るね』
「さんのぼせないようお気をつけ下さいねッ」
『はーい』
バシャバシャと水飛沫を上げて立ち上がり、中へと戻る女の子たちの背中を見送った。
『はぁ......』
やっと1人になった......
広い岩風呂に1人になり真ん中でぽつんと座る私。
明日から本格的に訓練か。どんな訓練なんだろう。また森の中を彷徨えとか言うんだろうか。首筋らへんにある2つの痕をなぞりながら考える。
お湯を両手で掻きながら岩風呂の端まで移動し、誰もいない事をいいことに湯に浸かったまま頭は岩風呂の縁に乗せて、両手両足を伸ばし空を見上げる。
見上げた夜空と私との間で、荼毘が器用に木塀にしゃがみ私を見下ろしている気がした。
あぁ。のぼせてきたかも。荼毘の幻覚が見える。そろそろ上がらなきゃ。