第20章 林間合宿 1日目※
芦戸さんに持っていたタオルを取られてしまい、ぐいぐいと押されたまま鏡の前に立たされた。鏡の中には下着姿の私とその後ろで女の子たちが立っている。
『あ......』
首と肩との境目、左右に赤い跡がついていた。なにこれ?触ってみても痛くも痒くもない。
『これなに?』
「いや、ウチらが聞きたい」
いや、私の方が聞きたい。と言いたい言葉はなんとか飲み込んだ。
「ちゃん知らんかったん?」
「なにってどう見てもキスマークじゃーん!!」
『キス......マーク...?』
芦戸さんに言われた事をもう一度呟く。
「もー!マーキングだよー!俺のって印ー!!!」
『なっ.........!!』
葉隠さんにぽすぽすと叩かれながら言われてようやく意味を理解し顔に熱が昇る。
マーキング......、ミスターが森の中で言ってたのはこの事だったんだ...。
あぁ、もう...。無知な自分が情けなってくる。
『もしかしたら......イレイザーヘッドに...』
見られた?という言葉が出る前に、しまった、と思った。無意識に出てた声を彼女たちが聞き逃すわけがなくて。
「はッ!?それ相澤先生に付けられたの!?」
「禁断の恋だー!」
「わ、わわわたくし、もう、ふ、副委員長としてどうすれば......ッ」
耳郎さん、葉隠さん、八百万さんが勘違いしている。
あぁ、もう......!話がどんどんややこしくなる....っ.....!
『違う...!本当に相澤先生じゃない...!』
「じゃあ誰なのー?ほらほら、芦戸さんに吐いちゃいなよ〜スッキリするよ〜??」
『本当に...知らない......』
嘘をついた。多分、右の歯形のようなものは昼間荼毘と森で会った時に思い切り噛みつかれた時のだ。てことは、左は弔くんだろうか。
『......。』
「あー!ちゃん逃げたー!」
その事実に恥ずかしくなり、騒ぐ葉隠さんを無視してみんなの横を通り過ぎ逃げるようにして浴場へ向かった。