第20章 林間合宿 1日目※
施設の外に出ると、マンダレイとピクシーボブがいた。陽はすっかり傾いていてオレンジ色の空が広がっていた。絡み合う枝の隙間から糸のような細く白い光が差し込んでいる。自分が戻ってきてからだいぶ時間経ってたんだな。
ふと周りを見る。イレイザーヘッドがいない。
自分で外に出るようにって呼びにきたのに。
施設を出た先でピクシーボブが更にその先の森を尻尾をゆっくりくねらせながら見つめている。
「お!やーっと帰ってきたにゃん!」
ゆっくりくねらせていたピクシーボブの尻尾が更に早く動き、まるで生き物のように動いている。
「随分遅かったねぇ」
舌なめずりをするマンダレイ。
薄暗い森の中から、生徒たちがゆっくりぞろぞろ姿を現した。木に手をつき今にも倒れそうな人、互いに肩を組んで支え合う人、足を引き摺る人。人それぞれだったが、生徒全員の制服がボロボロで全員が疲弊しきっているのは確かだ。
「何が3時間ですか......!」
四肢を投げ出し地面に寝転がり叫ぶ瀬呂くん
「それ、私たちプロならって意味、悪いねぇ......でも──」
マンダレイがそう言うと、後ろにいた私を指差して言葉を続けた
「キティはほぼぴったり3時間だったよ〜?」
「「「えーーー!?」」」
「さすがさんですわ......」
いつも冷静な八百屋さんもこればかりは疲れ切っているようだった。
「くん!俺はキミの実力を軽んじていたようだ.....、先ほどの言動陳謝する....。」
委員長がエンストした足を引き摺りながら、私の正面に立ち頭を下げてきた。
『いや、そんな、謝るほどでも......』
「おいお前ら───」
『...っ!!』
いつの間に施設から出てきていたのか、後ろに立っていたイレイザーヘッドの声。驚いた拍子に肩が震えた。
「バスから自分の荷物下ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後入浴で就寝だ。本格的なスタートは、明日からだ。さ、早くしろ」
「「「うう......」」」
いつもの威勢のいい返事はそこにはなく、ただただ唸り声に近い嘆きが聞こえてくるだけだった。