第20章 林間合宿 1日目※
「イヒッ」
ニッとピクシーボブが不敵に笑うと、地面に両手を着き、個性で地面を抉り上げた。
その反動で立っていた地面が盛り上がり、私達生徒全員は崖の下に一気に落とされてしまった。
『う......痛ったぁ......』
「おーい!私有地につき個性の使用は自由だよー!今から3時間!自分らの足で宿泊施設までおいでませ!この、魔獣の森を抜けて!」
崖の上からマンダレイが楽しそうに叫んでいる。
あぁ。もう。やっぱり来たくなかった、トガちゃんとお出かけしたかった。なんでこんなことに。
グアアア......ッ...!
突然呻き声のようなものが森から聞こえ、全員が振り返るとそこには土塊のようなものでできた怪物がいた。
脳無ちゃん......?では無い......か。
「これが魔獣......!?」
いまだ尿意を抑えているのか峰田くんがパタパタと走りながら叫んでいる。
「凍らせる...」
「レジプロバースト!」
「死ねやァァ!!」
「スマッーシュ!!」
轟くんの氷結で魔獣の足元を凍らせ委員長とかっちゃんが腕1本ずつを破壊、デクくんが胴体を攻撃して倒した。
それに続くように他の生徒も協力し合って、魔獣を1体ずつ確実に倒していく。
「前方から、3匹!左右に2匹ずつ!」
「総数7!くるよ!」
索敵能力に長けている2人。障子くんが腕から伸ばした複製器官で周りを見渡し、耳郎さんが耳のプラグを地面に刺して地中から音を感知している。
「行くぞA組!!」
委員長が声を上げると全員の士気が鼓舞されたように、みんなの目はやる気に満ちていた。
けど────
『悪いけど、私は別行動取らせてもらうよ』
複数人で1体ずつなんて、そんなちまちま倒してらんない。
こんなの脳無ちゃんに比べたらどうって事ない。
「なっ...!くん!こんな広い森、1人じゃ危険だ!」
『多対一でやってたら、夜になっちゃうよ。こんなの1人で倒していった方が絶対に早いと思う。』
「てンめぇ......っ!なめてんのかゴラァ...ッ...!」
『なめてない、事実を言っただけ。じゃ。』
「おいックソ!!待てやこの小豆女ァァ!!!」
怒鳴り散らすかっちゃんの声を背中で聞いて、駆け出した。