第20章 林間合宿 1日目※
『ふ....ぅ...ッは....ん...』
「ん......」
優しくて甘いキスを、私もすぐに受け入れた。だんだん深いキスへと変わりどちらからともなく舌を出し擦り合わせると、私と弔くんの息づかいと唾液の混ざり合う水音がアジトに響いた。
弔くんの唇から伝わるこの熱が緊張や不安なんて溶かしてしまうんじゃないかと思うくらいに、弔くんとのキスが気持ちよかった。
立ったままの私がバーチェアに座る弔くんの腰を裾をキュッと掴むと、弔くんの手が私の頭を固定しさらに深く口づけされた。
どのくらいそうしていただろうか、弔くんの顔が離れていき、私と弔くんの間につう、と銀色の糸が繋ぎ名残惜しそうにプツンと切れた。
『ぁ......』
切れた糸をみてつい声が漏れてしまった。
「まだ足りねェって顔してる。」
『......ッ、足りない...』
「...っっ!」
私がそんな大胆な事を言うものだから驚いてるのか、それともはしたない女と思っているのか赤い瞳をまんまるにしてこちらを見る弔くん。
足りない、なんて自分で言いながら出発の時間は刻々と迫っているわけで。
すると、スッと伸びてきた弔くんの手が制服のワイシャツのボタンを上から1つ...2つとゆっくり外していく。
『...ま、まって弔くん...もう時間が...っ...』
黙ってろ、低く掠れた声で弔くんにそう言われて言葉を遮られた。露出された左肩の、首と肩の付け根辺りに弔くんが顔を埋めたと思ったらチクリと痛みが走った。
『い...ッ...弔くん痛いよ....』
痛みを感じたところへ指を添え、指を確認しても血は出ていない。今の痛みはなんだったのかと不思議に思い、弔くんを見ても満足気な顔でこちらを見ているだけだった。
「林間合宿から帰ってきたらまた相手してやる。ほら行ってこい。」
私のはだけたワイシャツのボタンを弔くんが留めてくれた。相手してやる、その言葉の意味を考えてぼっと顔が熱くなる。
いつもより少し大きな荷物と収まらない熱、淡い期待を抱えて雄英高校へ向かった。
まさか2度も大切な人を奪われるとも知らずに。