第20章 林間合宿 1日目※
いよいよ、今日から林間合宿。
1週間分の着替えが入った少し大きめなリュックを抱えて自室からバースペースへ移動した。
『おはよ、弔くん。』
弔くんはいつも朝が早い。だいたい私が学校行く時には、こうしてカウンターに座っている。ちゃんと寝てるのだろうか、と心配しながらも弔くんの側へ寄る。
「はよ、。んだよ緊張してるのか?」
目尻を下げ、愉しそうに目を細ませる弔くん。
私の頬の上を、弔くんの骨張った指先が滑っていく。少しカサついたその指は頬の感触を楽しむようにスリスリと撫でた。
くすぐったいけど、弔くんに触れられるとなんだか落ち着く。
『ん....緊張してないって言ったら嘘になるけど、でも私の合図でみんなが襲撃に来るわけだから失敗できないなって。』
ふと弔くんの口の左下のほくろに目がいった。人差し指でその部分をくるくるとなぞりつう、と下へ指を這わせる。顎の先で行き場のなくなった私の指先はそのままゆっくり下へ定位置に戻り、ぶらんと肩から下がった。
「ハ....なんだよ」
ほくろをなぞられた事に怪訝な顔見せる弔くん。人は緊張すると、いつも取らないような行動をするって聞いたことがあるけどこういう事だろうか。
『弔くんのその口のほくろ好きなんだよね』
「......まぁ、そんな緊張するな。」
普段私が取らない行動を取ったことで、なにか読み取ったのか大きな手で頭を撫でてくれた。
『......』
それに1週間も弔くんに会えない。そう思うとつい黙ってしまう。恐らく3日目の夜に襲撃を仕掛けても尚、合宿を続けるという事は多分ないだろうけどそれでもやっぱり会えなくなるのは辛い。
「」
『...ん』
不意に弔くん名前を呼ばれて俯いてた顔を上げると、返事をする前に唇を塞がれた。