第19章 カアイイお友達
お店の中をぐるぐると周るも、結局トガちゃんは最初から決めていたリューキュウというヒーローがプロデュースする香水を買った。店員さんの熱意に押されて...というわけではないがトガちゃんとお揃いならいいかなとか思いつつ、私も買ってしまった。
『だいぶ時間かけちゃったね』
「男性ウケ...」
お店を出るとクスクスと笑いながらトガちゃんがその言葉を繰り返す。
「ちゃんも、好きな人ができたらこの香水でメロメロですッ!」
好きな人......と言われて思い浮かぶのは連合のみんなの顔と先生の顔。
トガちゃんは好きな人...とかいるのかな。
ピーンポーンパーンポーン
トガちゃんに聞こうとしたところでショッピングモール内に不気味なアナウンス音が響いた。
「何でしょう...?」
突然のことにトガちゃんからも先ほどまでの笑顔が消え、いつもより声のトーンを低くし呟いた。
アナウンスに耳を澄ます。
“ただいま当店において、ヴィランの目撃情報がありました。お客さまと従業員の皆さまは直ちに避難してください”
そのアナウンスに一気に館内がざわめきだし、我先にと入口へ逃げる人々。
2階にいた私とトガちゃんは、その様子をガラス手摺から見下ろしていた。
「どうしますか、ちゃん」
不貞腐れてるのか口を尖らせて私に言うトガちゃん。
『多分弔くんが来たんだと思う。』
私たちに見向きもせず、入り口に走っているってことは私たちにはバレてないって事だ。
まぁ私は世間ではヴィランとバレてないだろうけど。
指名手配されてるトガちゃんが気づかれていないのだからそういう事だ。
『あ......』
1階フロアの拓けた場所で、見慣れた姿を2人見つけた。
『トガちゃん走るよ...!』
トガちゃんに私のかぶっていたキャップを深く被せて、トガちゃんの手を取り見慣れた2人の元へ走り出した。
「ちゃんッ...!?」
『トガちゃん、今から私が喋ったらトガちゃんは静かにしてて!』
何が何だか分からないというトガちゃんにそれだけ言いひたすら2人のもとへ走り叫んだ。
『デクくん!!』