第19章 カアイイお友達
『え......』
どこからか聞こえてきたその叫びに、心臓がどくんと大きく跳ね上がった。
私の足が止まる。私の手を引っ張っていたトガちゃんも止まり異変に気づく。
「ちゃんどうしますか?」
トガちゃんがキョロキョロと周りを見ながら小声で聞いてきた。
声の主が指差す方向を見ると、雄英のクラスの子たちがいた。どうやら私の事ではないようで胸を撫で下ろす。
「1年?テレビで見てたぜ!体育祭うぇーい!!!」
『トガちゃん行くよ...!』
若者たちの言葉に、周りの視線が一気にクラスの子たちに向いた。その隙に走って2階にのフロアへ登った。
「はぁ...ッ...意外と会っちゃうものですね...」
『まさかこんなに早く出くわすとはね...ッ...』
息を切らしながら、2人でガラス手摺から1階のフロアにいる1年A組の生徒を見下ろした。
弔くんはもう来ているのだろうか...
そんな事を考えているとトガちゃんが、あ!と大きな声を出す。
『どうしたの?トガちゃん』
「あそこです!あのお店!」
トガちゃんの指差すお店へ向かうと、キラキラした小瓶がズラリと並び、その中には綺麗な色の水が入っていた。いや、瓶の色でそう見えるだけかもしれないが。
中に入ると清潔感のある香りから、甘い香り、大人の香り、さまざまな芳香がマスクをしていても鼻腔に響く。
「ありました!ちゃんこれでーすッ!」
トガちゃんが持っていたのは、女の子の片手にも収まるくらいの小さな小瓶で、四角いピンク色の可愛らしいデザインのものだった。
近くに置いてあった小さな紙に、香水をワンプッシュしてトガちゃんに渡された。
『あ......いい匂い。』
甘すぎず、かと言って大人っぽすぎるわけでもなく清潔感のある香りだった。
「でしょーッ!!」
「そちらはプロヒーローのリューキュウが、プロデュースした数量限定の香水なんですよ。いい香りですよね!実は男性ウケもよくてとっても大人気なんですよ!何か気になる物ございましたら、お気軽にお声掛け下さいねッ!」
定型の台詞を吐くように言う店員さんであろう人に、軽く会釈だけしてその場をやり過ごした。