第18章 期末試験※
ベッドから降りて短く声を漏らし、腕を広げて伸びをする。
先ほどまで寝ていた為か、やや制服は乱れていて背伸びをするとワイシャツの裾から白くて細い腰がチラリと見える。
見てはいけないと思い何となく目を逸らす。
この部屋の静寂がより一層、コイツが動くたびに出す衣擦れの音を強調させる。
ばーさんが、着替えさせたワイシャツに気付いたのか自分が今着ているワイシャツと、机の上に畳んであるソレを交互に見た後にゆっくりと、疑うような目で俺の方を見てきた。
おいおい、なにか勘違いしてねぇか?
『.........ッ...このワイシャツも相澤せんせッ──』
「......っちげーよ。変な勘違いするな。それはばーさんが汗ばんだお前を、俺がちょうど制服の替えを持ってるのを見てそっちに着替えさせたんだ。」
冷静に言ったつもりだったが、自分でも明らかに焦りが纏わりついてるのが分かった。
それは目の前のコイツも感じとったようで......
『...く......フフ....ッ..』
「んだよ......」
『先生、必死だなぁって。』
くすくすと笑いながら、少し乱れた制服や髪の毛を直す。
「おら、そんな元気ならもう帰るぞ......」
これ以上ここにいてはコイツのペースに巻き込まれると思い、さっさと保健室を出ようと電気を消す。
コイツの横を通り過ぎようとしたところで、控えめに服の袖を掴みそれは阻止された。
「......ん...?」
『.......助けて、くれて......ありがとう...ございます...』
普通なら聞こえない声量だが、ほとんど人の残ってない校舎の静寂に包まれた今この瞬間ははっきりと俺の耳に聞こえた。
下を向いて顔を隠してるつもりだろうが、窓から控えめに入る街灯の明かりがぼんやりとコイツを照らす。顔色を窺うには十分すぎる灯りだ。
「俺は運んだだけだ......まぁ、あんま無茶すんなよ...」
『ん......』
耳まで真っ赤にさせてるコイツの顔を初めて見て、だらしなく緩みそうになる口元を隠す為に、捕縛布に口を埋める。
だから顔も見ずに、少し強引に頭を撫でた。
今だけ、捕縛布があって良かったと思った。