第17章 ヴィラン連合とおべんきょう※微
『あつひろ......くん?』
まるで何も無かったかのように振る舞い、聞きなれない名前を訝った。
「俺の本名だよ、迫圧紘。」
なるほど......と頷く。確かにトガちゃんはトゥワイスの事も、仁くん、って呼んでいたな。
「わぁ!!ケーキがありますよ〜仁くん!私はこのタルトがいいのですッ!」
「俺は、このチョコレートがいいぜ!こんな甘ったるいモン食えっか!」
置いてあった箱の中身を見るなり好き放題に選んでいく2人。あれよあれよという間に目の前にはトガちゃんとトゥワイスが座りケーキを食べていた。
「圧紘くんは食べないのですかぁ?」
「コンプレスも食え!誰が買ってきたんだ?美味しいぜこのケーキ!クソ不味い!」
「ハハ、俺が買ってきたんだっての。......俺はねェ───」
ミスターが肩を掠めて笑い、チラリと私を見た。
......なに?
「あ、ちゃんここにクリーム着いて.....ま.......」
トガちゃんが何かを言いかけたがそんな事は頭に入ってこなかった。なぜなら、ミスターが急に顔を近づけてきたから。
『っ!!』
咄嗟に目を瞑った。唇の端に暖かくて柔らかい感触を感じて、目を開けると悪戯っぽく笑っているミスター。
「俺はケーキよりこっちの方が好き。ごちそーさん....」
『......っっ』
舌なめずりをするミスターを見て、すぐに舐めとられたのだと気づく。
「きゃあッ.....!!」
「コンプレスカッコいいぜ!!くそダセェ!!」
顔を真っ赤にし両手で顔を覆い、指の隙間からこちらを窺うトガちゃんと茶化すトゥワイス。
『普通に取ってくれればいいのに.........』
なんとか平然を装うが、きっと今の私の顔はタコのように真っ赤だ。顔が熱い。
「可愛い子はいじめたくなっちゃうのよ」
さ、勉強の続きしよーか、と言いながら教材を広げていくミスター。
結局その後のお勉強は、ミスターにされた事とトガちゃんとトゥワイスがやいのやいのと囃し立てるので全然集中できなかった。