第16章 デクくんとおべんきょう
『ねぇ、デクくん。この後時間あるかな。15分くらい付き合って欲しいんだ。数学、ちょっと分からないところあって......』
は緑谷のもとへ近寄り声をかけていた。勉強を教えて欲しいのは建前であった。
「さん!もちろんだよ!僕にできることなら協力させてよ!」
目の前の困っている人を放っておけない性格の緑谷は、眉を下げお願いしてくるの頼みをすんなりと受け入れた。
教室で一つの机に向かい合うようにして座ると緑谷。
15分でいいから、なんて言ったものの親切な緑谷がの開いたノートをを見るなり、ここも違うよ、あ、ここも、とどんどん指摘してくるのでは中々本題を切り出せずにいた。
教えてもらい始めてから1時間近く経っただろうか、窓の外を見れば夕方と夜の境目のような色の空が覆っていた。
「っ!!もうこんな時間だ...。さん、時間大丈夫?」
『こちらこそ、こんな時間までごめんね?デクくんの教え方分かりやすくてとても参考になったよ!そろそろ帰ろっか。』
教材を片付けながらは緑谷に言った。
「っ僕はそんな...ッ...さんの飲み込みが早いからだよ...!さすがかっちゃんの上をいくだけあるよ!」
嬉しそうに顔を綻ばせるを見てあまり笑うところを見たことがなかった緑谷はのその表情にドキドキしていた。
行こっか、と緑谷が言うと2人で立ち上がり緑谷の後ろをがついて行く。
『さすがに筆記はかっちゃんに勝つ自信ないなぁ...........
それよりさ、デクくん────』
緑谷が教室の電気をパチンと消したのと、が緑谷の名前を呼んだのはほぼ同時だった。
「どうしたの?さん...」
自分の名前を呼ばれて後ろにいるに振り返る。
夕方でも夜でもない空と、薄暗い教室も相まってか、先ほどまでニコニコ笑っていたの雰囲気が一瞬でガラリと変わり緑谷はごくりと固唾を飲む。