第16章 デクくんとおべんきょう
「おはよう諸君、えー、そろそろ夏休みも近いがもちろん君らが1ヶ月休める道理はない───」
教室の空気がピリつく。
夏休みか......
当分はこのクラスにも顔を合わせなくて済むわけだ。ありがたい。
トガちゃんといっぱい遊びに行きたいなぁ。あ、弔くんと黒霧と荼毘も誘っちゃおーっと。
毎日ヒーローの卵たちと顔を合わせ、何のためなのか分からない勉強やら訓練に辟易していた私は夏休みというワードに心躍らせた。
静まり返る教室にイレイザーヘッドが言葉を続ける。
「夏休み、林間合宿やるぞ」
.........はい?林間合宿...?
「「「がっぽーーーい!!!」」」
林間合宿というワードにクラスがどっと湧いた。
『がっぽい......?』
ツッコミどころが多いな。
「彼ら曰く、学校っぽい、の略だそうだ。」
隣の席の委員長がコソッと教えてくれた。
「肝試そー!」
「風呂!」
「花火!」
「行水!」
「カレーだな。」
「湯浴み!」
クラスが口々に言い合う中、合いの手のように自分の欲をストレートに挟んでくる峰田くんに吹き出しそうになってしまった。
「ただし─────」
再びイレイザーヘッドが口を開いた。
「次の期末テストで赤点のあったものは補習地獄だ。」
イレイザーヘッドがニヤリと言う。
私からすれば林間合宿など行かずにそっちの方がありがたいけどな。
「よし!!みんな!頑張ろうぜ!!」
誰かがそう言えば、おー!と盛り上がるクラス。
「あ、。」
イレイザーヘッドに名前を呼ばれる度に緊張が走る。「USJ襲撃の時の仮面女か?」と言われるのではないかと、その都度身構えてしまう。
返事はせずに、目線で返すようにイレイザーヘッドを見た。