第3章 　変わらないもの(七海夢)※

　前は“綺麗な男の子”だったのに
　今は“格好良い男の人”になっている




　七海とまた一緒に居られるだけで胸が高鳴る。あの頃の懐かしい記憶や想いが絡み合って、心がきゅーって締めつけられて、切なくて、苦しい。だけど全然嫌じゃない。

　なんとなく、本当に無意識に七海を見つめてしまっていた。するとこちらの視線に気づいたのか、七海と目が合う。



　「どうしました？」

　「べっ、別に！」



　私1人だけ、あの頃から何も成長していない。どう向き合えばよいのかわからないこの気持ちを、七海に知られたくない。上手く誤魔化すことができず、ふいっと感じ悪く顔を背けてしまった。



　「―――――怒って、いるんですか？」

　「へ？お、怒る？」


　お、怒って…？
　え、違うのに…！！


　私の態度からそう感じさせてしまったのだろう。申し訳なく思うも、なんて言えば良いのかわからず、否定も肯定もできなかった。



　「ずっと避けてますよね。出戻った後から」

　「え？！い、いや…」

　「今も避けましたね。私から顔を背けたりして」

　「いや？！そ、そんなこと…！」


　あ、あるけれど。大いに…！！


　避けてはいた。
だって、会いたかったけど、会いたくなかったし。会えて嬉しかったけど、嬉しくなかった。

　昔はあんなに(私が一方的に)お喋りもしたし、(これも私が一方的に)仲良しだったけど、今は何を話せば良いのか分からない。
　そもそも自分の気持に整理がついていないのに、何を話せっていうの？

　…なんて、ね。



　「―――そんなつもりじゃ、なくて、さ」



　大人気ないなんて、わかっている。
当たり障りのない会話をすればいいだけのこと。こかれ同僚になるのだから、上手くやっていかなくちゃいけない。とりあえず謝らなければと、口を開きかける。



　「避けられても仕方がないと、思ってます」

　「え？」


　七海は私の前に回り込み、深く頭を下げた。


　「すみませんでした」

　「な、何で七海が謝るの？！
むしろ、私の方が七海とまた楽しくお喋りできて、嬉しくなっちゃって、無神経な事言って…！」

　「は？」


　私の言葉に七海は訝しげそうに顔を上げる。
ま、また変な事言っちゃったのかな？！と、内心ハラハラしてしまった。