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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第3章  変わらないもの(七海夢)※



 灰原は七海の1番の友達で、相方で。
呪術師を辞めるきっかけとなってしまった人物だ。


(私は馬鹿だ…っ)


 あの頃のように戻れるわけがないのに。
共有スペースでいつまでも屯していた事が許される学生時代は、とうの昔に過ぎ去ったのに。錯覚してしまった。

 私は知らない。
素敵な朝食を作る七海も、何事もなかったように食事をする七海も、こんな大人びた空気を纏う七海なんて―――。

 あの頃から変わってないのは私だけで。
 全てにおいて、時間が経ちすぎていた。



 「…ご馳走様。

 私、帰るね!」


 気まずい空気に耐えられず、急いで食事を終わらせ席を立つ。

 嗚呼、もう七海と楽しい会話なんて出来ないかもしれない。思い出に浸れる居心地の良さを味わった後に、こんな解散は後悔が倍増する。気持ちが溢れないように、きゅっと口を真横に結んだ。



 「待って下さい」

 「わ…!?」


 再び七海に腕を掴まれる。
掴んできた七海自身も躊躇っている様子で、何か言いたそうにひととき口籠る。しかし、すぐにジッと私を見据える。不覚にもドキッとしてしまった。



 「な、七海?」

 「この後、付き合ってほしい場所があります」

 「え?」

 「行きたいところがあります」









 リーン リーン

 鈴虫の鳴き声が、静かな夜に響き渡る。
それもそのはず、此処は都内とはいえ奥地の山間だ。
昼間は夏のように蒸し暑いのに、夜はすっかり秋の涼しさに様変わりだ。



 「また呑むんですか?」

 「いいでしょ、今日は休みなんだから!」



 誰もいない夜の高専を缶酒片手に、私に呆れた七海と一緒に歩く。

 決してお酒を呑みたい訳では無い。
歩行飲酒なんて行儀も良くないし、迷惑行為だ。此処は関係者意外、他の誰かとすれ違うことさえ有り得ない。
 また酔って七海に迷惑かけるなんて事も絶対にしない。だって、七海と二人で歩いているこの空気に耐えられなくて、喉にお酒を通すフリをしている。何も話さなくて良いように。

 七海と大きく高低差を付けながら肩を並べて高専の奥地へと向う。私は横に並ぶ七海をチラリと盗み見る。

 あの頃―――まだ高専生だった頃。
七海ってこんなに大きかったかな。少なくとも今みたいなガッシリした体格ではなかったと思う。




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