第3章 変わらないもの(七海夢)※
返事をするよりも早く、お腹の音が返事をしてしまった。
「「…」」
は、はず……恥ずかしっ!!
醜態をさらした(吐いて後処理させた)事実に青ざめた顔が、今度は羞恥で赤く染まっていくのがわかる。だって顔が熱い。
「あ、あの!これは…っ」
何て言い訳しよう!
誤魔化すために頭を抱え込みアレコレ考えるも「もうこれ以上恥を晒すことなんてないんじゃないか…?」そう自分に諦めがついた途端、スン…ッと気持ちが落ち着いた。顔から手を離し、やっと七海の顔をまともに見ることができた。
「お腹が空くぐらい、元気です」
正直に言おう。
だって私は嘘が向いてない。昔からすぐバレるし、誤魔化すのも下手くそだ。
…後輩だった七海だって、知ってる事だ。
「…ふ、」
「?!、い…っ!?」
い、いま、七海が笑った…!?
あの仏頂面がトレードマークだった七海が!
「い、今!笑ったでしょ」
「笑ってません」
「嘘だっ、笑ったよ!」
「貴方が元気で何よりです。
それにこんな時間ですから、お腹も空くでしょう」
はぐらかされた気もするが、追求はしないであげよう。ん?こんな時間…?
「あれ、今って何時?」
「もう夕方ですよ」
「は!?」
まだ日が高くて気づかなかったが、時計を見ると既に16時を過ぎていた。
「わ…ヤバ、任務…ッ!」
わ、私、ほぼ丸一日寝てたってこと…?!
任務まで時間がない!丸一日寝てた事実と、信じがたい時刻であることを受け入れられなくてフリーズしてしまう。いや、フリーズしている場合ではない…!!
「今日は、「七海!本当にごめんね!!今度お詫びするから!!」
七海が何か言いかけるも、私は大急ぎで大してない荷物を掻き集め出発の準備をする。そして玄関があるであろう方向に向かう。
「じゃ!七海っ、また…わっ?!」
走り出そうとしたその時、七海にぐっと腕を掴まれた。
「今日はありませんよ、任務」
「わ、私はあるよ!
17時には高専だから、もうこのまま…」
「だからありませんよ。
私と貴女、今日は非番にしてもらいました」
「はい?」
「心配なら確認して下さい」
「え?」
頭にハテナを浮かべる私に七海はスマホを差し出した。