第3章 変わらないもの(七海夢)※
「それに僕の連絡じゃ来てくんないでしょ」
「そ、そんなこと…!」
ある。大きいにある。
あり過ぎて否定できない。
「僕が「七海出戻り会しよ」って連絡したのも、綺麗に無視してくれちゃってさー」
「え!?」
慌ててスマホを取り出す。
すると五条が私の肩に腕を組み、一緒にスマホを覗き込んできた。
「って、ちょっと!見ないでよ!」
というか、五条の顔が近い。
私はお酒を飲んでいるから、絶対に臭うはず…!!それに、その毛穴一つない綺麗な顔を近づけるのやめて!ムカつく!頑張っている私の肌が報われなくて悲しくなる!
五条とくだらないやり取りしつつ、チラリと七海を見る。私には目もくれず、黙ってお酒を飲んでいた。
あぁ、私だけか。
七海を避けていたが、会いたい気持ちがなかった訳では無い。だからこんなボロボロの姿でも会えた事が嬉しいと思っている。
思考も気持ちも、ぐるぐる回る。
あぁ、気持ち悪い。
「ほら!ちゃんと連絡してるじゃん。
既読も付いてるし」
「ホントだ…」
五条とのやりとりを確認すると確かに連絡が来ていたし、連絡を見た形跡がある。しかし全く覚えていなかった。
「どーせ今日も合コンだったんでしょ?」
「う、うるさいな」
「そこで立ちっ放しは、他のお客の迷惑になるでしょう」
五条と言い合っていると、七海はこちらに視線も向けず「飲み物、注文したらどうですか」と言い放った。眉間に皺を寄せてお酒を黙々と飲み続けている。
「っ」
確かに、七海の言う通りだ。
けれど、そんな冷たい態度を取るほど、私のことが嫌だったのか。
かぁーっと顔に熱と、瞳に涙が集まっていくのがわかる。遠まわしに拒絶されたのが悲しくて、惨めで。鼻の奥がツンとした。
やっぱり、私だけだった。
本当に色々なモノがぐるぐる回って、気持ち悪い。
「そーだね。とりあえずさくらも座ろ!」
五条が私の両肩に手を置き、近くの空いてる席…七海の横に座らせられた。
やだ、やだやだ
五条が私の耳に口を寄せる。
私にしか聞こえない声量でこそっと話しかけた。
「さくらも、いつまでも意地張ってないでさ」
は?