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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第3章  変わらないもの(七海夢)※




 「脱サラして、出戻りの!
 
 七海建人くんでーすっ!」



 二度と聞くことがないと思っていた名前を、数年ぶりに耳にする。


 「その紹介の仕方、辞めてもらえませんか」


 ハッとする。
聞き覚えのある声。記憶の中ではもう少し高い声だったけれど。
 五条の隣りに居た男性を、初めてちゃんと見る。

 サラリーマンのようなスーツに、七三分けのヘアスタイル、そして独特な形の眼鏡。

 私は知らない、こんな男の人



 「お久しぶりです」


 眼鏡の奥に見える、切れ長の青緑色の瞳。
 私の記憶と、同じ……


 「…七海、なの?」

 「はい」


 声が、あの時よりもずっと低くなっている。
このスーツの男性は、華奢で可愛かったあの七海建人だという。以前も細身だったけど、更に顔周りがシュッとしている。
 彼はスーツが似合う男の子…じゃなく、スーツを着こなす男性になっていた。


 「ッうそ…」


 何で此処ーーー高専に居るの?
 なんでなんでなんでなんで


 なんで…っ


 「近々さ、七海の出戻りを祝う会でもしよーよ!僕は呑めないけど」


 五条は嬉しそうに「伊地知と硝子にも声かけてさ!」なんて言っているが、全然頭に入って来ない。

 これ、夢のお告げってやつ?
本当にまさか。再開する日が訪れるなんて夢にも思わなかった。

 もう二度と会うことはないと、あの日の自分に―――楽しかった思い出に、決別した。

 偶然に会うことがあったとしても、七海自ら戻ってくるなんて…っ



 「ごめん

 私、任務あるから」



 気持ちが追いつかない。
どんな顔をすれば良いのか分からなくて、私はその場から逃げてしまった。

 今の私は、平常心を装って七海の横を通り過ぎることさえいっぱいいっぱいだった。
 補助監督が待機している車に飛び乗る。


 「さくらさん、どうかしましたか?」

 「…あ、伊地知……」


 今日の補助監督は2つ後輩の伊地知だっだ。私の慌てぶりに彼も慌てている。


 「ねえ、伊地知は知ってた?



 七海が戻ってきたこと」



 「……私も、五条さんから聞いたばかりですよ」

 「そっかあ」


 彼の返答の様子からすると、私より早く知っていたみたいだ。





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