第1章 報われない(五条/夏油夢)
「二人はさ、いいよ。
クズだけど顔は良いし、頭いいし、強いし
……モテるし」
「「は?」」
二人は鳩が豆鉄砲食らったようにポカンとしている。え、私なにか変なこと言ったかな?
「今なんっつった??」
「モテるでしょ、アンタ達は」
好きな人に振り向いてもらえない気持ちなんて。モテる二人には無縁でしょう。
「…………いや、別にモテねーし」
「この間、他校の女子達にメアド聞かれてたじゃん」
「悟は目立つからね」
「夏油なんて任務帰りに年上のおねーさま達に逆ナンされてるの見ました」
「「…」」
無言の肯定ですか。はいそうですか。
五条と夏油はモテる。それはそれはモテる。
道行く女の子達に「これ渡して下さいっ!」と預かった手紙やプレゼントの数知れず。
「いいよねーモテる人たちはさー」
自分でそう言っておきながら、胸の奥がちくりと痛む。
選り取り見取りだもんね。
私みたいに惨めな気持ちになったり、出会いがなくて悩んだりしたことないんだろうな。相手からやってくるもんね。
別にそこまで嫌味っぽく言ったつもりはなかったが、五条は不貞腐れ、夏油は頭を抱えている。
「「 …」」
「なに?なんか言った?」
五条と夏油の呟きが聞き取れず、先程の二人と同様に耳に手を当て聞こえませんよポーズを取ってやった。無視された、ちくしょう。
「それで、昨日の合コンでいい人はいたのかい?」
「ん〜この人なら…って感じの人が1人居たよ」
「………へぇ」
「ふーーーーん?」
興味なさすぎでしょ。
え、聞いておいてその反応は酷くない??
いや、この際だからこのまま聞いてもらおう。
「か…可愛いとか、言ってくれてさ。その人」
そんな事言われたことないから、吃驚したけど嬉しかった。思い出しただけで恥ずかしくて、髪を指にを巻き付けくるくると弄ぶ。
「道も通路側歩いてくれるし、ドアも開けてくれるし…凄く優しいの」
これぞレディーファースト!
男子にこんな風に優しくしてもらうのは初めてで、とても照れ臭かった。
…こんな気持ちになれるなら、きっとこの気持ちも上書きできるはずだ。