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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第2章  後輩Nの苦悩(七海夢)




 さくらさんの頬の涙の痕と、濡れた睫毛をスッと手で拭う。



 「わっ、…なっ、な、ななみ?!」



 貴女からしょっちゅう触れてくるくせに、こちらから触れると頬を赤らめるなんて。

 目を丸くして驚くさくらさんが面白くて、可愛くて。思わず笑ってしまった。


 「いいですよ」

 「えっ?」

 「行きます。今日ぐらいは」

 「……うんっ!」



 それで貴方が喜ぶのなら、喜んで。



 「「俺等も行くわ!」「私達も行くよ!」」


 自分とさくらさんの間を、五条さんと夏油さんが慌てて割って入って来た。
 …だから、貴方達の大切なモノを獲るような事はしませんよ。


 「じゃあ皆で行こう!
 美味しいもの、みんなで食べたら楽しいよ!」


 「硝子も行くよね?!しょーこー!!」と大声で家入さんを呼ぶさくらさん。先程の涙で睫毛を濡らす彼女は一瞬で何処かへ行ってしまった。今は偽りのない眩しい笑顔を、みんなに振りまいている。


 (さくらさんが楽しそうなら…)

 彼女が幸せなら、それでいい。



 “初恋は実らない”


 (昔の人は、よくそんな言葉を作ったな)


 初めての恋をし、初めての失恋をした。
 全身を汗で濡らす、真夏日のことだった。








 ―――これは後日談のこと。
敵の攻撃を避けるため高層ビルから身を投げ出し、意識が薄れる中。さくらさんは不思議な光景を見たようだ。


 「すっごく空が青かったの。
 澄んだ青さっていうのかな?

 都会とは思えない晴天で…」

 「いえ、帳はいつもと変わりなかったと」

 「そうだよねぇ」


 見間違いかなぁ?と首を傾げ考え込むさくらさん。任務が終わり高専の廊下を二人で歩いていると夜蛾先生に「さくらー!ちょっとこっち来い!」と呼ばれる。


 「はーい!なんだろ?
 じゃあね、七海!お疲れさま!」


 ――これもまた後日談のこと。
「階級が上の後輩と任務させれば刺激されて、さくらもやる気が出ると思っていたのだが…」と、夜蛾先生は呟く。

 どうやら夜蛾先生はさくらさんの階級を上げたかったらしい。

 しばらくしてさくらさんは4級呪術師から飛び級して、準一級術師となる。








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