第2章 後輩Nの苦悩(七海夢)
「…こわ、かった…ッ
うわぁーーーーーーーーん!!!!!」
衝撃だった。
先輩であり、好きな人の泣く姿は。
さくらさんはまるで子どものようにわんわんと泣き出した。そして全身の力が抜けたのか、その場にぺたんと座り込んだ。
「な"な"みと、あいばらが…ッ
し、んじゃっだら…どうじよ"、っで…ッ」
「そんなに心配してくれたのか」というほんの少しの嬉しさと同時に、「そんなに心配させてしまったのか」という申し訳無さと情けなさで胸が一杯になり苦しくなった。
さくらさんを泣かしたのは間違いなく自分のせいだ。
「うんうん」
「死なねーよ、あいつ等根性あるから」
背の高い大の二人の男が。
座り込んで大泣きする少女の目線に合わせるよう、なるべく身体を小さくするためにしゃがみ込み、更に屈む姿は異様だった。
「み"、ん"なにッ、あ"えな"くなる"って、
お"も"ったら"っ…こ、わ"く、て……!」
「…怖い思いをさせて、悪かったね」
「最強の俺等がいるんだから、
そんなことある訳ねーだろバカ」
嗚咽混じりに泣くさくらさんの小さな背中を、五条さんと夏油さんは宥めるようにトントンと叩く。
さくらさんは一生懸命泣き止もうとし、涙を拭う。しかし涙は彼女の意識に反し止まる気配がない。
多分、二人は。
本当はさくらさんを抱きしめたかったと思う。何故なら自分もそうしたかったから。
「げとう"…ちがう"よ"〜
ごじょ、あ"、りがと……うぇーーん」
「うんうん。いいんだよ。
本当によく頑張ったね、さくら」
「おうおう。もう気が済むまで泣いとけ、な?」
子どものように顔をぐちゃぐちゃにするさくらさんの泣き方にも驚いたが、それ以上に五条さんと夏油さんに対するさくらさんの気の許し様と、さくらさんの扱いに慣れた様二人の様子にとても驚いた。
「――――――くやしい、な」
全てもってかれた
自分が入り込める余地など、1ミリもない。
最強コンビの知らないさくらさんを知っていると思っていたのに、全然知らなかったんだな、と。