第2章 後輩Nの苦悩(七海夢)
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(私、死ぬんだ)
多分、手足のどっか折れてる
全く力が入らない
黙って殺されるくらいなら、攻撃を回避するために飛び降りた。どうにかなるかと思ったが、どうにもできそうにない。
(七海と灰原、きっと逃げ切れたよね…
全然先輩らしい先輩じゃなくて、ごめんね)
そんな事を思いながら真っ逆さまに落ちていくさくら。
(嗚呼、身体が痛い。
怪我、硝子に怒られるかな
…って、関係ないじゃんね。もう)
深く考える事を辞めた。
この状況を打破する力もなければ策も浮かばない。死ぬ事を考えたら、きっと後悔と恐怖でいっぱいになってしまう。
「楽しかった、な」
呪術師をしてればこうゆう死に方もあるって分かっていたけど、何処かで他人事だと思っていた。自分には関係ない事だと。
今、この瞬間になるまでは。
(もっと、皆と一緒に居たかったな)
どうせ死ぬなら、勉強しないで遊んでればよかった。
どうせ死ぬなら、おしゃれとか恋とか、好きな事をもっとやっとけばよかった。
どうせ最後なら、人生に一回くらい告白しておけばよかった。
好きな人の顔が、頭の中を過る。
恐怖より後悔ばかりが波となって押し寄せる。
さくらはスッと目を閉じた。
後悔の波にさらわれないように、
何も感じないように、
涙が溢れないように、
心に蓋をした。
「なーに目ぇ瞑ってんだよ」
「ほら、起きて」
「っ!」
空耳かと思った。
空から会いたい人の声がした。
さくらは吃驚して目だけを空に向ける。
飛ぶように、高いところからジャンプするように。五条と夏油の姿が目に飛び込んできた。
2人が近づいてくる。
近づくたびにだんだんと、五条と夏油の姿が重なって1つになった。
2人が飛ぶ空は、とても。
とても―――――…
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