第2章 後輩Nの苦悩(七海夢)
灰原も「是非行きましょう!」なんて。
空気を読んでくれ。
先輩二人が恨めしそうにこちらを睨んでいる。
「なあーにが、“行こうね(はあと)”だよ!
後輩に色目使うなっつーの!」
「だから使ってないってば!
仲良くしたいの!」
仲良くしたくないです。
「ほらほら。先輩の威厳もないくせに先輩ぶって、後輩を困らせちゃいけないよ」
「先輩ぶってって…!ひどっ!
てか、困らせてなんかないじゃん!」
とっても困っています。
3人のやり取りを家入さんが「小学生かよ」と呆れていた。……本当に、全くだ。
(もう少し、素直になれば良いのに)
初対面の、第三者の自分から見てもそう思う。五条さんと夏油さんは、厚葉さんに好意を寄せているようだ。
(訂正しよう。
この中で一番面倒くさいのは厚葉さんだ)
厚葉さんが絡むと2人が自動的に付いてきて更に面倒くさい事になる。なるべく関わりたくない。
「ねぇねぇ、七海」
「何ですか」
再び灰原がコソッと話しかけてきた。
「先輩達って、厚葉さんが好きなんだね!」
「………」
そう思うなら、なぜ煽るようなことを言うんだ…!?
「楽しい高校生活になりそうだね!」
これだから天然は…!!!!
“なるべく穏やかに過ごせればいい”
自分のささやかな願いは桜の花ビラと共に散っていった。
*
「と、言うわけで。
今後、1年の任務にさくらも一緒になることが多くなるから」
「は?」
意味がわからない。
夜蛾先生は何を言っているんだ?
「…まあ、あれだ。
五条と夏油と任務だと、実力が合わなさすぎてな」
家入さんは基本的に危険な任務は同行しない。そうなると五条さんと夏油さんのペアに厚葉さんが加わるのはバランスが合わないらしい。
五条さんは特級、夏油さんは一級。
そして厚葉さんは、自分達より下の階級―――4級だ。
「ごめんね?
二人の邪魔しないように頑張るから!」
夜蛾先生は「後輩に追い抜かれて、やる気が出ればいいんだが…」とボソリと呟いた。
強くなる気がないという事だろうか?
そんなやる気のない人と一緒に任務だなんて真平御免だ。