第2章 後輩Nの苦悩(七海夢)
「自分は厚葉さんも一緒で嬉しいです!!」
「…」
なるべく関わりたくないと思っていたのに、こんな形で一緒に行動することが増えるなんて。
(ハァーーー…)
心の中で盛大な溜息をついた。
お願いだから、足を引っ張るようなことはしないで欲しい。
と、思っていたが。
余計なお世話だった。
「灰原、そっち行ったよ!」
「了解ですっ!七海!」
「わかってる」
追い込んだ呪霊達を一気に払う。
今日の任務も何事もなく、効率良く終えた。帳が上がり、晴天が広がる昼下がり。
「二人ともありがとー!」
「3人だとあっという間に終わりますね!」
灰原と彼女…厚葉さんは「やったね!」とハイタッチをしている。
意外なことに。
灰原と自分の二人だけの任務はもちろんスムーズに行っている。厚葉さんは自分たちとは異なるタイプの術式であり、彼女がいるとより任務を遂行しやすかった。
「七海、お疲れ様!」
「……、はい」
厚葉さんにハイタッチを求められ、渋々手を上げると厚葉さんがパンッと掌を合わせてきた。
「あっ、補助監督さん来たよ!
七海
さくらさん!」
いつの間にか灰原は厚葉さんを“さくらさん”と呼ぶようになっていた。自然とそうなるぐらい、いくつもの任務を一緒にこなしてきた。
「はぁー疲れた!
ごめん。私、今日も寝ちゃうかも…」
「いいですよ、起こしますね!」
「zzz…」
「「早っ」」
いつもの光景。
任務終わりの車で厚葉さんはよく眠る。
「疲れちゃったのかな」
「任務というより、自主練の疲れでしょう」
彼女はよく自主練をしている。
今寝ているのはその疲れか、またはこれからの自主練に備えて寝ているのか。
「わあ、今日もよく揺れてるね!」
「ハァ」
これも、よく見る光景の1つ。
厚葉さんが眠ると頭がよく揺れる。いや、揺れるなんてものじゃない。上半身がフラフラと、まるで振子時計の振子のように頭をぶん回す。
「あ、今日は七海の肩に収まったね」
「…みたい、ですね」
車の後部座席に座る時、必ず厚葉さんを真ん中にする。