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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第1章  報われない(五条/夏油夢)




 「幻滅、した?」



 意を決して聞いてみる。
幻滅され、見損なわれるだけならまだいい。
不純異性交遊を嫌悪されて、距離を置かれてしまったら。

 (それだけは堪えられない…ッ)

 彼氏彼女に夢見るさくらだ、あり得なくはない。自業自得にも関わらず、自分勝手な思考が堂々巡りする。


 「んー」

 さくらは手を組み考え事をするポーズで唸るばかりだ。

 …ダメだ、この間すら心臓に悪い。


 「そうだね、ちょっと幻滅しちゃうかな」

 「はは…」


 乾いた笑いを辛うじて絞り出す。
日頃からクズ呼ばわりされているのに、何故こんなにもダメージが大きいのだろうか。
 さくらからどんな言葉が出るか、ぎゅっと身構えた。


 「彼女が居ない所だからって、他の女子に…例えただのクラスメートの私なんかにも優しいのは。ちょっとねー」


 “ただのクラスメート”と認識されている事は分かってはいたが、いざ本人から放たれると胸にグサリと刺さる。

 ……ん?彼女?他の女子…??



 「は?」

 「だって!自分が彼女だったらさ!
自分の目の届かない所で彼氏が他の女子に優しくしてるなんて嫌じゃん!」

 「えっと、」

 「夏油の彼女は年上オネーサンだから、心が広いかもだけど!」

 「…彼女、では。ないんだよね」

 「…」

 「…」

 「…えっ?」


 今度はさくらが聞き返す。


 「いや、恋人、ではなくて」

 「えーっと……ラブホに行ったよね?」

 「―――あぁ」


 辛い。
好きな人の前で、他の女性とラブホに行った確認を取らされる悲しさ。


 「いわゆる、その。大人の関係ってやつ…?」

 「あー、まぁ、そう」

 「えっ……ええーーーー!!!!!」


 恋人と思い込ませておけばよかったのに。
 私はバカ正直に訂正を入れてしまった。


 耐えられなかった。
さくらに私に恋人がいると思われるのは。恋人にしたい人は、目の前に居るのだから。

 だから、これだけは知っていてほしい。




 「他に好きな人が居るんだ」


 「す、好きな人…?」



 さくらはとても驚いた顔をしている。
普段、好きな人…さくらの前でこのような話題は出さなかったからな。


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