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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第1章  報われない(五条/夏油夢)




 (もう合コンのことは頭になさそうだな)


 単純で、色気の微塵もない彼女を可愛いと思ってしまう自分はやはり重症だと思う。


 「勝てる気がしないな」


 惚れたほうが負けとはよく言ったものだ。
 さくらに缶飲料を「ん」と渡す。


 「え?」

 「あれ、これじゃなかったかい?好きな飲み物」

 「う…ううん、これ!」

 「負けた方が奢りだからね」

 「そうだったね、ありがとう!」


 二人でゲームセンターの外のベンチに腰を掛ける。私とさくらの間にはあと人一人分くらいの間隔がある。


 (もっと近くに寄れればいいのに)


 だけど、この距離感がこそばゆくて
 悪い気がしない



 「ねえ、夏油」

 「ん?」

 「夏油はさ、どんな女の人がタイプ?」

 「タイプ?」

 突然何を言い出すのやら。
やはり合コンのことが忘れられないのだろうか。缶飲料を口に付けながら考える。


 (タイプ、ねえ…)


 真っ先に思ったのは“さくらみたいな人”。
しかし、そんな返答は出来るはずもなく…


 「好きになった人がタイプかな」


 嘘は言っていない。


 「セクシーな年上美女じゃないの?」

 「ん?どうしてだい?」





 「だって、この間セクシーな年上美女とラブホに行ってたじゃん」




 「ゲッほォ"ッ"ッ」

 口に含んでいた飲み物を盛大に吹き出してしまった。


 「わっ?!ちょっと大丈夫?!」

 「ゲホッ、かはっ…すまない」


 柄にもなく激しく動揺してしまった。
杞憂に終わると思ったが、一番見られたくなかった場面を見られてしまっていた。
 ………ここはもう、腹を括るしかない。


 「……………見たのかい?」

 「……………見た、ばっちり」


  ば  っ  ち  り  か。


 「そうか………………はあー」

 「逆ナンの年上オネーサンだよね?」

 「えー、まあ。そうだね」

 「やっぱ男の人は、あーゆー女の人が好きなのかぁ」


 女の私でも魅力的だなあって思うもん!と、さくらは眉を下げて笑う。
 何故だろう、その笑い方は寂し気に見えた。ズキンと胸が傷む。

 …いや、胸が痛むのはこれから起こる事に対して不安が渦巻いているからに違いない。




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