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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第1章  報われない(五条/夏油夢)




 「ちょっと!話せって言っておいて何そのリアクション!!」

 「うっせーリア充爆発しろ!」

 「リア充になる前に爆ぜた方がいいね」

 「ひっどー!!
 …私なんて、大して可愛くもないし?
 頭が良いわけでも、強いわけでもないし?」


 可愛いから、頭が良いから
 呪術師として強いから。


 そんな理由で人を好きになるものではない。
それがキッカケになることはあっても、あくまでもキッカケにすぎない。

 喉のすぐそこまで出かかった言葉たちを無理やり飲みこんだ。


 「だから、今のうちにモテを研究して!彼氏ゲットしたいの!」

 「そんなに憧れるかい?彼氏に」

 「そりゃ憧れるよ!」

 「…へぇ」

 「……最強コンビの二人には分かんないだろうけど。私なんて華の高校生じゃなくなったら、なーんにもないの」


 さくらの呪術師としての自己肯定感の低さは私や悟、硝子が関係してるかもしれない。
 彼女が弱いのではなく、私や悟、硝子が少し…いや、かなり異質なだけだ。


 (何もない訳がないだろう)


 異質な私達の支えになってるとは、考えられないんだろうな。

 さくらの良さはそんな簡単に語れるものじゃない。さくらは私達にとってかけがえのない友人であり、私にとって大切な…意中の人だ。

 さくらを卑下するのは、例えさくら自身であっても許さない。



 「私達が居る」

 「は?」

 「何もなくなっても、さくらの側にいるから」

 「……えっ…………と?」



 そのままのさくらが好きなんだ


 言いたい、言えない、この気持ち。
 ほんの少しでも良いから、伝わってくれ。




 「私達は最強なんだ」

 「うん?そうだね」

 「俺等が居るんだから、お前は何もなくていーだろ」

 「最強の私達が居るんだから、さくらも最強」

 「はい?何それ」

 「最強に強いし最強に頭いいし、




 ……………最強に、可愛い」



 「は……はあ?!」

 「だから最強なんだよ」


 死ねる。今なら恥ずかしさで死ねる。
自分でもだいぶキザなセリフを言っていると思う。けれどここで恥ずかしさを悟られる訳にはいかない。

 悟が笑いを堪えているのが視界の隅で見える。あとで覚えてなよ、悟。


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