第1章 　報われない(五条/夏油夢)

　「……二人はさ、いいよ。
　クズだけど顔は良いし、頭いいし強いし、

　モテるし」

　「「は？」」


　再び悟と声が被る。今なんて？空耳か？？


　「今なんっつった？？」

　「モテるでしょ、五条と夏油は」

　「………いや、別にモテねーし」


　悟、その間は肯定を意味してしまうよ。


　「この間他校の女の子達にメアド聞かれてたじゃん」

　「悟は目立つからね」


　この話題は自分には振れられたくない。
　悪いが悟に犠牲になってもらおう。


　「夏油なんて任務帰りに年上のおねーさまに逆ナンされてるの見ました」

　「…」


　マジか、見られていたか。
　そこまではまだいい。どこまで見ていた？

　問いたいがその先が怖くて聞けない。
　どうかそれ以上は見られていませんように。


　私は内心ハラハラしながら事の成り行きを見守るしかなかった。
　私達の無言を肯定に捉えたさくらは、頬をみるみると膨らませていく。



　「いいよねーモテる人たちはさー」


　選り取り見取りだもんね！　と。
　相手からやってくるもんね！　と。


　……何故だろう。含みのある言い方に聞こえるのは私だけだろうか。



　「好きな人に振り向いてもらえなければ、何も意味を成さないのだけれどね……」


　さくらが「何か言った？」と言っているが、弁明したところでどうなると言うんだ。

　私が好意を寄せていると知ったら、きっとさくらは逃げるだろう。

　それは一番堪えられない。



　「…それで、昨日の合コンでいい人はいたのかい？」

　「ん〜この人なら…って感じの人が１人居たよ」

　「………へぇ」

　「か…可愛いとか、言ってくれてさ。
その人、通路側歩いてくれるし、ドアも開けてくれるし…

　凄く、優しいの」

　「は？」


　それだけ？
そんなサルでも出来そうなことをしただけで、さくらにとって意中の人になってしまうのかい？


　「だからさ、今度は私服で会……って、私の話聞いてる？！」


　ほんのり頬を染め乙女らしいさくらはとても可愛らしく、魅力的だ。
　ただ、その心は知らぬ男に向けられていると思うと騒めく嫉妬心でどうにかなってしまいそうだ。



　嗚呼、頭が痛い。
　額に手を当て頭を垂れた。