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あの頃の私達は【呪術廻戦】

第1章  報われない(五条/夏油夢)



 《報われない》

 ※夏油視点


















 好きな人が、合コンに行ったらしい。


 「ほら、何時どこで誰と合コンに行ったのか話してごらん?」


 にこやかに穏やかに諭してみるものの、内心は真逆でドス黒い感情が無限に吹き出してくる。
 彼女を捕獲した己の脚が、それを隠しきれない。思わず力強く細い体を締め上げてしまう。


 「話す!話します!!話すから離してーっ!!」



 ……こんなふざけたやり取りでないとさくらに触れられないなんて。
 また、至近距離で触れることができる関係が嬉しい、なんて。小学生地味た自身の思考に呆れる。

 離れるのは名残惜しいが、さくらが観念したので解放した。




 「で?何で合コンに行ったんだい?」


 口元は弧を描き、なるべく穏やかな口調で問いかけるもさくらは怯えた様子だ。おっと、ちゃんと笑えていなかったかな?


 「……幸せに、なりたいんだもん」

 「「は?」」


 悟と声が思わず被る。今なんて?


 「私から見るとさくらは毎日幸せそうだけど、違うのかい?」

 「今日も任務後に特大パフェ頬張りながら「幸せ〜(はあと)」って言ってたよな」

 「そうそう。この顔周りの肉付きが幸せ太りの証拠じゃないのかい?」


 普段、女子に無闇に触れることはしない。
 好意を勘違いされてしまう事が多いから。

 しかし、さくらとはクラスメートという、良くも悪くもそれ以上でも以下でもない関係が築き上げられている。
 ……それが裏目に出る事になるとは。



 「な"…何で太った時ばっか気づくの?!」

 「もちろん痩せたときも気づいてるよ」

 「面白くもなんともねーから言わないだけだ」

 「クズ!ほんっとクズ!!」



 全く、感情の起伏が忙しないね。
 怒ったり怯えたり拗ねたり、笑ったり。
 見ていて本当に面白い。

 自分の好みとは掛け離れているのに、惹かれてしまったなんて。


 (一方通行な想いでよかったのに)


 呪術高専で4人で過ごす毎日が意外と楽しくて。この日々が続くのなら。守れるのなら。このままが一番良いと本気で思っていた。


 ――――思っていた矢先に、

 さくらの「彼氏が欲しい」、だ。



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