第1章 報われない(五条/夏油夢)
「そんなんのどこがいいんだよ」
「え?普通に可愛いじゃん!ふわふわだよー」
「あっそ」
結局、ぬいぐるみはさくらが自分でゲットした。しかも100円で。俺がいくら課金して臨んだことか!
「報われねーなあ」
こんなショボい事すら叶えられねーとか
俺って結構ダサい?
夕焼けが身に沁みる。
「ちょっと屈んで」
「は?何」
「いいからいいから!」
しぶしぶ屈むも「もっと屈んで!もっと!」と注文の多いこった。
「たくっ、なんだよ」
「はい、よく頑張りました!」
さくらは俺の髪を撫でるように優しくポンポンと叩いた。
「……なんだよ、コレ」
「え?ご褒美のなでなで?」
疑問形かよ!
しかも「取れなかったけどね」と一言多い。
さくらは意地悪そうな顔をした。
けれど、その手が心地良くて。
いつまでも触れられていたくて、馬鹿にされても払い除けられなかった。
「ふふっ、ぬいぐるみより五条の方がふわふわだー」
この#NAME1を好きな気持ちは愛なのか、恋なのか。
そんなことは分かりもしないが。
胸が締め付けられて苦しいくらい、#NAME1のことが大好きだ。
「――――――俺にしとけよ」
「あはは……は…、えっ?」
根拠も証拠もないけれど、多分。いや絶対。
さくらのことがずっと好きだ。
じっとさくらを見つめる。
さくらも俺から目を逸らすことができず、頬を赤らめ、泣き出しそうな顔をした
……と、思ったのも束の間。
寂しそうに笑ったと思ったその一瞬。
さくらはいつもの“クラスメート”の顔に戻ってしまった。
「な……に、言ってんのー!
人の事、馬鹿にしてー!」
さくらはバシーン!と俺の背中を叩き出した。
ちょ……痛っ、力強くない?!
てか、良い雰囲気だったよな?!今!!