第5章 アフターナイト
「あの~、編集長…ッ。
そのお話って…やっぱり
どうしても…、ですかねぇ?」
『ん?須藤ちゃん、何言ってんの。
須藤ちゃんのあの記事が好評で、
女性客が増えたって。
あっちが喜んでるんだから、何が
問題あるって言うの。
俺の知り合いだって言ったでしょ?
あそこのオーナー
って、訳だから。今夜、いいでしょ?
大丈夫大丈夫、俺も今日は一緒だから。
アイツの顔、ついでに見に行くからさ』
そう編集長が言うのには、理由があって。
ああ言ったハプニングバーと言う場所は
男性が一人で行く場合よりも。
女性を同伴して来店すると、
カップル料金の扱いになるので。
かなり男性はお安く、
お得に入店する事が出来るのだ。
『お前の分は俺が出すから、
どうせアイツの驕りだしな、良いだろ?』
どうせこの編集長は、
言い出したら聞かないから。
元々のマスカレイドナイトへの
私の潜入レポも元はと言えば、
この編集長に
無理やり押し切られた形だったしな。
まぁ、編集長と一緒なら
お酒が何杯か入ったとしても。
何かの間違いには絶対ならないし。
編集長も、あの特集を読んで
ちょっと気になってたから…と言うので。
私が書いたあの記事が…、きっかけなのなら。
ルポライターとしての仕事ぶりを
上司に褒められて…私も悪い気はしないので。
金曜日の、仕事が済んでから。
編集長と一緒に
マスカレイドナイトへ行く事になった。
もし…、ナオトさんが居たら…
とか…一瞬考えてもしまったけど。
逆に編集長と一緒なら…、
変な気を遣わずに。
あくまで…ルポライターの
須藤 朱莉として。
あの時のお礼と謝罪だけすればいいし…。