第2章 破壊衝動【一松】
今日も遊びに来たノアちゃん。
あの交際宣言から1週間ほどたった後のことだ。
毎日ってわけじゃないけど、ノアちゃんはよく家に遊びに来てくれた。というのも、おそ松兄さんとかトド松が持ち前のコミュ力でしょっちゅう家に誘ってくれていたからだ。
そんな中、定期的にノアちゃんは俺や猫とも遊んでくれた。猫以外で、初めてできたと言ってもいい『友達』と呼べる存在ノアちゃん。
彼女は元から動物は好きな方だったらしいけど、おれと出会ってから猫好きに拍車がかかったらしい。
おれとしてはそれだけでも十分嬉しかったけど、何より2人で猫と一緒にのんびり過ごす時間が大好きだった。可愛い猫に可愛いノアちゃん。これ以上の幸せなんて多分ない
…あるかもしれないけど、おれは怖かった。
こわくてつかめなかった。
友達以上の関係になること。
彼女はきっと猫と触れ合いたくておれと一緒に遊んでくれてるんだ。ただのついで。あるいはただの同情。じゃなければ、こんなおれと一緒にいてくれるわけがない。内心諦めていた。諦めた方が楽だと思っていた。欲求なんて捨てきったつもりだったのに…黒い感情、黒い願望が心の中に湯水のごとく湧いてくる。
なんで、なんで…
なんでよりにもよってあいつなの。
おれの方が絶対にノアちゃんのこと好きなのに。あんなやつの上っ面のセリフだけに騙されちゃダメだろ。いや…アイツが根はどれだけ優しいやつなのかおれはもちろん他の兄弟たちも知ってる。普段はクソ鬱陶しいだけだけど、ふとした瞬間に
「ねぇ、一松くん聞いてる?」
「えっ!!あぁ…ご、ごめん。ちょっとぼーっとしてた…」
どうやらずっとノアちゃんは話しかけてくれていたらしい。おれはあの日からずっとこのことについてばかり考えを巡らせていて、何をするにもうわのそらだ。
「一松くん、なんか最近様子が変な気がするよ。大丈夫?」
あんたがいう?それ…要因の中にあんたも含まれてるよノアちゃん。
「そんなこと…ない」
「そっかぁ…何もないならいいんだけど…」
あんたって全然おれのこと見てないね。何も無いわけないでしょ?マジでなんなの?おれはこんなにもあんたのこと見てるのに。
「まあ、それで話戻しちゃうけどさ…一松くんだけでも受け入れてくれて嬉しかったよ」