第2章 破壊衝動【一松】
「…は?」
「ほら、私とカラ松くんが付き合うって皆の前で公表した時のことだよ。皆文句ばっかり言ってきたけどさ、一松くんだけは何も言わずにじっと静かに聞いててくれてたから…」
「…」
頬を赤らめながら俯くあんた。
「だから、ありがとね。彼にふさわしい女になれるように、私これからもがんばるから」
「…」
なに言ってんの、馬鹿じゃないのあんた。
俺の中の何かが壊れる音がした。
目の前の女にイライラしてきた。
怒りで頭は熱くなっていくが
心はどんどん冷たくなっていく。
家には誰もいない。
おれはソファから立ち上がり、ノアちゃんを見下ろす。見下すといったほうが正しいか。
「どうしたの?一松くん」
壊したやつが悪い。あんたが悪い。
あんたが悪い。あんたが悪い。
あんたが悪い。あんたが悪い
「あんたが悪い」
「えっ?一松く…………きゃっ!!」
おれはソファに座るノアちゃんを無理矢理引きずり下ろし、床に押し倒した。そのまま馬乗りになる。その衝撃に驚いた猫は窓から逃げ出した。
「いてて…ちょっと、一松くんっ!?なにしてんの!」
ノアちゃんの問いには答えずに無言で冷ややかな視線を彼女に向ける。自分の感情が愛なのか憎悪なのか分からなくなってきた。ただ、今のおれがやりたいことは一つだけ。
目の前の女を壊したい。
だって、目の前のこいつは俺のものじゃないから。カラ松のものだから。だから壊す。
「ヒヒッ……」
おれが幸せそうに笑うと、ノアちゃんの目には恐怖が宿り、ビクリと体を震わせた。つい先程までの幸せそうな笑顔の面影はなく、完全に怯えた表情になってしまった。
「なにそのかわいいかお」
おれは思ったままの感想を伝えてあげた。
「一松くっっっ…んぅっ」
何かを言おうとしたノアちゃんの意志を無視しておれは無理矢理その口にキスをした。
閉じようとする唇を無理矢理こじあけて舌を侵入させる。
ノアちゃんは顔を背けようとするが、抵抗虚しくおれの舌の味を存分にあじわうことになった。
ノアちゃんが吐き出す息全部吸い込んでやったし、おれが吐く息全部吸わせてやった。