第1章 出会いと来るはずのない別れ
「もう!提案したのおそ松兄さんなんだからさっさとインターホンくらい押してよねっ」
「うるさいなぁ!俺だって緊張してんだよ!わかったから…」
俺たちは人1人分のドアの前に6人群がっていた。
カラ松はイタすぎて通報されかねないし、チョロ松はポンコツ化するし、一松は不審者っぽくて通報されかねないし、十四松に至っては完全に危険人物。インターホンを誰が押すか問題で約五分ほど他所の家の前で立ち往生していた。
俺かトド松のどちらかが押すと決めた結果、挨拶しにいくことを提案した俺にその役割が回ってきた。
…ほんと、こういうとき長男はつらいよ。
震える手でインターホンのボタンを押す。
電子音が虚しく響き渡る。
「す、すみませーん!となりの松野ですけど!…すみませーん!!」
返事はない。
「いないね!!留守かな!」
十四松がぴょんこぴょんこと飛び跳ねる。
チョロ松がやれやれとため息をつく。
「しょうがないよ。今昼だし、俺たちニートとは違ってノアちゃんきっと仕事で忙しいんだよ。夕方辺りにまたもう一度出直そう」
皆が帰ろうとしたその時だった。
俺たちの後ろに女の子が立っていた。
黒い長髪がサラサラで、おめめがくりっくりの超絶かわいい子。
6つ同じ顔が並ぶ俺たちの顔を見た彼女は目をまんまるにして驚いていた。しかし驚いたのは一瞬で、徐々に表情を緩ませながら言った。
「もしかして…松野さんのとこの?」
透き通るような可愛い声!
「そ、そうそう!もしかして…君がノアちゃん?」
「はい!私、方舟ノアっていいます。先日はお母様とお話させていただいて…その、お世話になりました!」
「いえいえそんなそんな!あ、俺おそ松!
松野家の長男!こっちのイタいグラサンかけてんのが次男のカラ松ね」
「フッ……ダーリンって、呼んでくれてもいi(ぐふぁっっっっ)」
一松に無言の蹴りを入れられるカラ松。
「ぼ、僕、三男のチョロ松っていいます!今後僕ら兄弟が迷惑かけるかもしれませんが…何卒よろしくお願いします…!」
「……四男の一松」
「はいはいははいはーい!おれ、五男の十四松!ほら見て触手できるよ!うぇーい!」
「ちょっと十四松兄さん、初対面の人にそのノリだめだって!…あ、ごめんね!僕の名前はトド松。松野家の6男だよっ」