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【呪術廻戦】比翼の鳥 連理の枝 〜第一部〜

第10章 始動




瞳孔が開き、いやにニヤついた五条悟が確かにそこに立っていた。

背筋がザワザワと総毛立ち、嫌な汗が背中を伝う。

死に際で反転術式を会得し、死の淵から生還したというバケモノに、動物としての生存本能が警鐘を鳴らす。


〝コイツはやばい。逃げろ〟と。


呪力のないオレにはこれまでその本能に従うことが生存戦略だった。


でも。

守りたいものができちまったんだよ。

相手がどんなバケモノだって、退くことはできない。




「…勝負はこれからだよ」

「あぁ、そうか?そうかもなあ!!」




今度こそ確実にオマエを殺す。

格納呪霊から呪具を引き摺り出し、ハイになっている五条悟にとどめを刺すべく走り出した。












(違和感)


10年前のあの雪の日、コイツに背後の存在を気取られた時に感じたのと同じモノ。











まるでオレの攻撃を全て見切ったように空中でひらひらと舞う五条悟。

敵わない。
格が違う。

わかってる……。
逃げろと警鐘を鳴らす本能を捩じ伏せてでも、世の中の理を逆さにしても、オレはコイツに負けられない。

息をつく暇も与えないほどの攻撃の最中、五条悟の静かな海のような瞳と目が合う。

一瞬、時が止まった気がした。



「虚式・茈」

















ただ働きなんてごめんだね、いつものオレならそう言ってとんずらこいた。
だが、目の前には覚醒した無下限呪術の使い手。おそらく現代最強となった術師。
否定したくなった。ねじ伏せてみたくなった。
オレを否定した禪院家。呪術界。その頂点を。

呪力を持って生まれれば、術式を持って生まれれば、何度も何度も生まれ直したいと願ったよ。
ただ生まれながらにして〝持つ者〟だったお前に、これ以上オレから何も奪わせない。



繭…オマエだけは。

そう…願ってしまったのがいけなかったのか?

自分を肯定するためにいつもの自分を曲げちまった…その時点で負けていた。

自分も他人も尊ぶことのないそういう生き方を選んだオレが、オマエに会ってもう一度大切なモノを守る人生を歩む覚悟をした。

オマエがオレの生きる理由だったよ。






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