第10章 始動
side 伏黒甚爾
「五条悟、探してるってよ」
時雨から〝情報が入った〟と電話が来て、家を出た。
繭には話を聞かれたくなかったから。
「一年前に失踪した許嫁が未だに消息不明で、本家の奴らが次の許嫁候補連れてきても見向きもしないから五条家は後継問題でバタついてるって……許嫁って、繭ちゃんのことなんだろ?」
「……」
「その都合悪くなるとだんまり決め込むのやめろよ。ここまで人にさせといて蚊帳の外ってのはねーだろ」
「…うるせーな。余計なことにクビ突っ込むなよ」
「お前のせいですでに突っ込みかけだっつーの……でもやっぱりお前の嗅覚ってすげえな。なんか予感してたのか?」
「あ?なんの話だよ」
「お前の電話の後に五条悟が護衛を任された天元様の星蔣体暗殺依頼の話が入ってきたんだよ。結局そのせいで五条悟の身辺調査が必要になったんでな、先回りできたのは助かった。盤星教には呪術師と闘う力はねえ、でも金払いはいいぞ。…お前も一枚噛むか?この話」
「…いいぜ、その話受けてやる。」
その時頭に浮かんだのは金のことでも、天元様が星蔣体に同化できなかった未来でもなく〝五条悟を殺せる絶好の機会〟が巡ってきたということだった。
オレの勘はこのことを示唆していたのかもしれない。
パズルのピースがぴたりと当て嵌まった感覚に静かな興奮を覚える。
「…どうせ必要になる仕事だったなら、情報料はいらねえな。
…ちょっと出てくる」
「へーへー。そう言うと思ってましたよ…ったく、繭ちゃんも苦労すんなー」
向かいのビルで起きた爆発を眺めながら〝星蔣体暗殺〟…もとい〝五条悟の抹殺〟について頭の中で算段を始める。
久しぶりにちゃんと頭を使った仕事をしなきゃならねえ。
繭と出会ってからは足が遠のいていたが、考え事には最適な〝ある場所〟へと久方ぶりに足を向けた。