第9章 蚊帳の外※
問題は五条悟だ。
最近たびたび繭の話の中に登場する五条悟の存在。
その度にみっともない嫉妬心が煽られる。
繭は親に決められた結婚でお互い恋愛感情はなかったというが、話を聞いてるだけでわかる、繭が鈍過ぎて気づいてないだけで五条悟が繭に恋していたのは間違いない。
五条家の坊の許嫁候補なんてそれこそ腐るほど手を挙げる奴がいるのに、未だに繭を連れ戻そうと追手を差し向けてくるのがその証拠だ。
そもそも、コイツがそばにいて好きにならないオトコなんているか?
こんなことに悩まされるなんて自分らしくねーと思いながらも、携帯電話を取り出して着信履歴から知った相手に電話をかける。
電話越しの呼び出し音を聞きながら、天使のような寝顔で眠る繭を起こさないようそっとベッドから抜け出し、床に散乱したスウェットのズボンをとりあえず履く。
リビングに向かい子供用ベッドを覗くと恵もまだ眠っていた。
ベランダの鍵を開けてサンダルを履いたところでようやく電話のコール音が途切れた。
『………んだよ、こんな朝っぱらから…』
「出んのおせーよ」
『…まだ朝の6時だろ。オマエが早過ぎなんだよ…じじいかよ……』
「オマエにちょっと探って欲しいことあって。金は払う」
『………わり、煙草取り行ってた。…なんて?』
「オマエ御三家あたりの情報も入ってくんだろ?五条悟絡みのネタ、なんでもいーから仕入れろよ」
『…またオマエは藪から棒に…急過ぎんだよいつも…どうせ繭ちゃん絡みだろ』
「黙ってやれよ。金はいくらになってもいい」
『へーへー、お熱いこって何より』
「なんかわかったら報告しろ」
一方的に告げて通話を終了する。
天与呪縛のせいか知らねーけど、こういうときのオレの勘は当たるんだよ。
〝違和感〟
あの雪の日に五条の本家で五条悟を初めて見た時の感覚に似ている。
衝撃?恐怖?
…コイツには絶対に敵わないという無力感?
オレとお前は生まれた瞬間に立ってる次元が天と地ほどの差があることは重々承知だが、そんなこと言ってられないくらい手離せないモノがある。
だから、ソレを守るためならオレはどんな汚い手だって使ってやる。