第9章 蚊帳の外※
でも、高専に入ってから二人のクラスメイトができた。
傑と硝子。
反転術式を持つ硝子と初めて教室で会った時、真っ先に思い浮かんだのはお前のことだった。
俺と同じ年で反転術式使えるヤツ、お前以外に知らない?
って初対面の硝子に詰め寄ったことは、のちのち何度も話のネタにされるくらい俺の必死さがヤバかったって。
高専でできた初めての同級生。
お前と一緒で俺を〝五条家の当主〟としてじゃなく、ただの〝五条悟〟として見てくれるヤツら。
こんな世界もあったんだって、日々ワクワクするようなことが更新されていく。
そんな時にいつも思うのは、お前がここにいたら、ってこと。
初めてコンビニでプリンてやつを食べてその美味さに衝撃が走った時も。
寮の部屋でたこ焼きパーティーしてボヤ騒ぎ起こして夜蛾センにこっぴどく怒られた時も。
任務終わりに食べる深夜ラーメンの旨さに感動を覚えた時も。
何処にいても何をしてても、お前の姿を探しちまう。
傑と硝子の二人にはよく茶化されるんだよ。
俺は初恋拗らせてるって。
でも悔しいけどホントアイツらの言う通り。
お前がいなくなって、五条家は優秀な〝胎〟が一つ消えたって多少残念がってたけど、またすぐに次の許嫁候補ってやつを持ってきた。
でもお前以外が俺の隣に立つなんて想像もできなくて。
お前のことで頭がいっぱいになりすぎて正直、いっそのこと忘れてしまいたいって思ったこともある。
実家から離れたのをいいことに、任務帰りに声かけてきた適当な女で初体験を済ませてみたけど、お前以外の他の女にも、セックスっていうものにもハマることができなくて。
また振り出しに戻る。
どうしてくれるんだよ繭。
オレのことこんなに悩ませて楽しいか?
今ごろお前、どこで何してるんだよ。
「繭…」
もう一度、お前に会いたい。