第9章 蚊帳の外※
side 五条悟
アイツが俺の前から消えてから、もうどれぐらいの月日が経っただろう。
16歳の誕生日を迎えたあの日から、未だ行方知らずの繭。
俺を含めた五条家総出でその行方を探しても、全くなんの痕跡も掴めなかった。
繭の実家も必死で心当たりを虱潰しに探したようだが、その甲斐も虚しく繭に関する情報は得られず。
今でもずっとアイツからの連絡がないかと携帯から目が離せず、繭と同じ学校のセーラー服が目に入ればアイツじゃないかと何度も確認して、四六時中繭のことで頭がいっぱいだった。
少しでもアイツに関する情報が欲しくて、明らかに何かを隠しているアイツの兄に再び会いに繭の実家にも行ったが、
驚くべきことに、事件の後繭の兄は亡くなっていた。
一瞬、俺がキャパオーバーな呪力を浴びせ続けて一時的な廃人状態にしてしまったことが原因かと思ったが、繭の母曰くお抱えの運転手が運転する車の後部座席に乗っている時に、居眠り運転の大型トラックに後ろから突っ込まれたことによる事故死だったそうだ。
死体は運転手もろとも原型を留めないほどぐちゃぐちゃだったという。
事故現場には呪力の痕跡もなかったため、ただの一般的な自動車事故として処理された。
明らかに繭の失踪に関わる兄の突然すぎる死には不自然さを感じたが、確たる証拠もないためそれ以上言及することはできなかった。
オマエを探し続けている間にも無情にも時は流れ、俺は東京都立呪術高等専門学校、いわゆる高専に入学する年になった。
本来だったらオマエと二人で一緒に実家を出て東京に行って、同級生として同じ教室で同じ時間を過ごすはずだったのに。
オマエには照れ臭くて言えなかったけど、オレはその時を心待ちにしてたんだよ。
お互いの実家とかややこしいしがらみから解放されて、オマエと机を並べて、普通の学生みたいな青春を過ごすことができるんじゃないかって、何度も思い描いてた。
なのに、今オレの隣は未だに空白のまま。