第8章 瓦解(がかい)※
その鋭い目と荒々しさはまるで野生の動物のようで思わず本能的に逃げ出したくなるけど、すぐに捕まって甚爾さんの下に引き戻されてしまう。
「もぉだめぇ…壊れちゃうよ…とぉじさん」
「悪ぃけどオマエが良すぎてこんなんじゃ全然足らねー…オレの気が済むまで付き合って」
「死んじゃうぅ…」
まだまだ足りないと言って再び私にのしかかる体力無尽蔵オバケの甚爾さん。
その後もあちこちいじられて何とか満足してくれたのか、もう指一本すら自分で動かすことのできなくなった私に水を飲ませたりお風呂に入れたりと甲斐甲斐しく世話をしてくれた。
ようやくベッドで一呼吸つけるようになった頃にはもう今にも瞼が落ちてしまいそうなほど体力の限界に来ていて、まどろみの中で甚爾さんと何か会話を交わしたような気がするけど、それが夢なのか現実なのか定かじゃない。
私の頭を撫でてくれる甚爾さんの大きな手のぬくもりを感じながら、あの誕生日の夜から初めて、何も考えず泥のように眠りについた。
「愛してる」
そう、耳元で優しい声が聞こえた気がしたのは、夢の中のことだったのかな……。