第8章 瓦解(がかい)※
side 繭
甚爾さんの翠色の目がまっすぐ私を見つめている。
恵と同じ綺麗な色。
でもどこか寂しそうな色。
前にも同じことを思ったのを思い出した。
甚爾さんは傷ついた子どもの目をしてる。
だからいつもどこか寂しそうで、そばにいてあげたいって、守ってあげたいって思わせられる。
実際は私の方が甚爾さんに守られてばっかりなのに。
だから私は、どんなに怖くても甚爾さんの全てを受け入れてあげたいって思って、私を見下ろす甚爾さんを自分からぎゅっと抱き締めた。
「甚爾さん…」
なんて言ったらいいのかわからない。
〝受け入れます〟って言ったとして、わたしにちゃんと甚爾さんを受け入れることができるのかな。
きっと甚爾さんが求めてるのは、体を一つに繋げるってことだけじゃない。
甚爾さんの不安をなくしてあげられたらいいのに。
「好き…私、甚爾さんが好きです」
私の大好きな翠色の瞳を見つめたまま、生まれて初めての告白をした。
クラスメートと話したことがある。
好きな人ができたら、どんなシチュエーションで、どんな告白をされたい?相手から?自分から?
みんな楽しそうに未来の想像を膨らませていたけど、好きな人ができたことのない私はピンとこなかった。
でも、告白するにしろされるにしろ、自分の気持ちを相手に伝えるのってすごくドキドキすることだろうと思っていた。
だって、相手が自分を受け入れてくれるかわからないのって、すごく怖いことだから。
でも今実際に甚爾さんに初めて気持ちを伝えた私は、思ったよりすごく落ち着いてると思う。
何でだろう。甚爾さんが私と同じ気持ちでも、そうでなくても構わないって思ってるからかな。
甚爾さんの傷を少しでも癒すことができれば、私はそれで充分だって思えるから。
私の世紀の告白に甚爾さんは目を見開いて、その後項垂れるように俯いてしまったので私からその表情は見えない。
私にできるかわからないけど、甚爾さんを〝受け入れたい〟って気持ちがあることだけは、伝わってくれたかな。