第8章 瓦解(がかい)※
オレを見上げたまま動けずにいる繭の震える唇を自分のソレで塞ぐと、びくっと反応した体から動揺が伝わる。
体の下で身を捩ろうと抵抗を試みる繭の両腕を軽々と捕まえて、柔らかくて甘い感触を角度を変えて何度も味わう。
「ん…っ、とうじさ…」
「口開けて」
制止しようとオレの名前を呼んだ繭の唇の隙間から舌を捩じ込み深く口づけ、逃げる小さな舌を追いかけて自分のものと絡ませるといやらしい水音が部屋の中に響いた。
だんだんと繭の抵抗が弱まり、押し退けようともがいていた両手が今は必死でオレにしがみついている。
「ふぁ…とうじさん…」
「ん…イイコだな」
はぁはぁと息を荒くして、必死で酸素を取り込もうとする真っ赤な頬を撫でる。
オレが何度も口付けたせいで果実のような唇はさらにぽてっと赤く色づいていて、誘われるままにまたそこに口付けた。
「…兄貴にはこういうことされたのか?」
「してないです…とうじさんが初めて…。」
「オレがオマエのファーストキスの相手?」
恥ずかしそうにこくんと頷く繭。
思春期のガキかよって自分で自分にツッコミを入れたくなるが、コイツの〝初めて〟のうちの一つを奪えたことに気分が良くなっている自分がいた。
「五条悟のためにとっておいたのにな?オレに奪われちゃってかわいそ」
悪いな?五条家の当主サマ。
きっとお前は大事に大事にその時が来るまで繭に手を出さずに守ってきたんだろ。
でも本当に大切なものは手放しちゃ駄目だろ。
だからオレみたいなヤツに横から掻っ攫われることになるんだよ。
「全部オレが教えてやるよ」
「やっ…」
不安げな眼差しでオレを見上げる繭の耳元で囁くとぴくんと震える肢体。
そのまま片方の耳を唇でなぞり反対側の耳は指ですりすりと撫でてやると、子猫のような可愛らしい声をあげてぷるぷる震えるもんだから、もっといじめてやりたくなって赤く染まった形のいい耳たぶをべろりと舐め上げた。