第8章 瓦解(がかい)※
side 繭
それから、甚爾さんはベッドに座って、私は少し距離の空いたところにある椅子に座って、私の生まれた家のこととか持ってる術式のこと、それから五条家との関係について…話し始めた。
自分のことを人にわかりやすく伝えようと思うと難しくて、決して上手に説明できていなかったと思うけど、甚爾さんは私が一通り話し終えるまでずっと私から目を逸らさず、相槌すら打たずに黙って話を聞いていた。
「…だからオマエ、初めて会った時から名字名乗らなかったのか」
「はい…初めはもしかしたら甚爾さんが関係者かもしれないって思ったので…秘密にしててごめんなさい」
「オマエの判断は間違ってねーよ…まあ、元関係者ってトコだな。オレは禪院家の生まれだけど16の時に絶縁して家を出て、その後禪院の姓は捨てたからな。もう家とは関わりねーよ」
「…甚爾さんはどうやって家を出れたんですか?」
「オレはオマエと違ってむしろここに居てくれるなってずっと言われ続けてたからな。オレが家出てってウチの奴らは万々歳だったろ…オマエとオレは違うよ、何もかも」
確か悟から聞いたことがある。
御三家の中でも特に禪院家は相伝の術式持ちなら一生安泰、そうでなくても術式があれば人並みの生活、それ以外は人以下の扱いをされるって…、聞いた当時はそんな酷いことが他の家ではされてるって信じられなくて。
でも甚爾さんの話を聞くと本当みたい…そんなお家で甚爾さんは育ったんだ。
術式がないどころか呪力を全くもたない甚爾さんがどんな扱いをされてたか…想像すると胸が苦しくなる。
「…なにオマエが泣きそうな顔してんだよ」
「だって…」
「オレの話はいーんだよ。今はオマエの家の話をしてんだろ」
「はい…」
「つまり簡単にまとめるとこう言うことだろ。オマエは親に決められた五条悟の許嫁で、家から逃げたオマエを連れ戻そうとしてるのが昼間のアイツらってことだな。アイツらが五条家の奴らなら呪力の痕跡辿るくらいのことはしてきそうだけどな」
「…絶対ではないですけど、たぶん悟じゃなくてうちの関係者だと思います。…顔は知らない人でしたけど、私のこと〝お嬢様〟って言ってたし」