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【呪術廻戦】比翼の鳥 連理の枝 〜第一部〜

第7章 萌芽(ほうが)




「繭お嬢様。大人しくしてくださいね。何も我々はあなたを傷つけたい訳じゃない。あなたを無事で連れ帰ることが任務です」


私を背後で拘束する男の人が耳元で囁く。
どうしよう…相手は3人。
しかも一般人じゃなく術師。
相手が私に手を出せないって言うなら、私一人なら最悪何とか逃げるだけならできたかもしれない。
でも…恵がいる。

この場は大人しく拘束されようと呪力を解こうとしたその時。


「なにすんだこのガキ!!」
「めぐみ!!」


恵が拘束していた男の手に噛みついたらしい、噛みつかれた男は激昂して恵を勢いよく放り投げた。
反射的に体が動いて飛び出そうとしたけど、背後の男に羽交い締めにされて動けない。
恵の小さな体は宙を舞い、公園にあった花壇の上に鈍い音をさせて落下した。

「いや…」

落下時に頭をブロックにぶつけたのだろう、仰向けに倒れている恵の頭の下からじわじわと赤い液体が広がっていくのを見て、体中から血の気が引いた。

「離して!!あなたたちに大人しくついていくから、恵を治させて!!お願い」
「残念ながらそれは私たちの任務の範囲外です。行きましょうお嬢様」
「だめ!!恵が死んじゃう…」

ぴくりとも動かない恵。
今すぐそばに行って治してあげたいのに…。
それができない悔しさと恵に私のせいでごめんなさいって気持ちでぐちゃぐちゃになって涙が溢れて止まらない。
何とかこの場に留まろうとするけど、両脇から男の人に体を抑えられて力づくで公園の前に止まったバンの方に連れられてしまう。
こんなのいや……。


「誰か助けて!!恵を助けて!!」




喉から血が出るほど必死に叫んだその時、目の前に一陣の風が吹いたと思ったら、拘束されていた両腕が自由になった。
急いで恵に駆け寄って、反転術式で頭の傷の治癒を始める。
そばには恵のことを放り投げた男の人が、顔が変形して息があるのかないのかわからない状態で倒れていた。


(よかった…。)


恵は脳震盪を起こしたためか意識は失ってるけど、呼吸も脈拍も正常だ。
この程度の傷なら私の力で治せるだろう。
それでも万が一恵の命を失っていたらと思うと、溢れる涙と体の震えがおさまらない。

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