• テキストサイズ

【呪術廻戦】比翼の鳥 連理の枝 〜第一部〜

第6章 陽だまり



もっと他の女みたいにわかりやすく〝どこに行ってるのか〟〝ナニをしてるのか〟って聞いて来たら、オレだって答えようがあるものの。
優しい繭はその辺突っ込んでこないことに甘えている。
でもオレが女のとこに行ってるってのは流石に気づいてるよな?
それでそのしょぼくれた反応ってことは、〝他の女のところに行かないで欲しい〟って意味に捉えてしまうのは、流石に自惚れすぎか。

すっかりしょげてしまった繭の頭を撫でる。


「またオマエの好きそうなもん買ってくるから、オレの分も美味いメシ残しといて」

「…はい」



純粋で無垢な繭。
オマエの透き通るほどの真っ白さは、オレには眩しすぎるよ。
だから、オレの中にある暗く澱んだ部分は、オマエには見せられない。
きっと、オマエを汚してしまうから。

オマエとオレは違う世界の人間だから。



「じゃあ出てくるわ。明日まで戻んねえからちゃんと戸締りしろよ?」

「はい…甚爾さんも、気をつけて行ってらっしゃい」


恵を抱っこしたまま、玄関まで見送りに来る繭。
その瞳には寂しさが滲んでいるように見えるけど、気づかないふりをして背中を向けた。


家を出ると背後でドアが閉まる音がして、繭の作るあたたかくて居心地のいい空間から、現実世界に引き戻された。


もうすぐ、日が沈んでオレの嫌いな時間がやってくる。
夜は嫌いだ、忘れたはずの出来事を思い出させるから。

忘れるために酔えもしない酒を飲んで、適当な女を抱いて、何も考えずに眠る。
こうやって痛みに気づかないふりをしていれば、いつか本当に痛みが麻痺していくことを願って。





「甚爾久しぶりぃ、今日来てくれて嬉しい。暇してたの?」

「…まぁな」


オートロックのかかった高層マンションのエレベーターを上がり、記憶の中にある部屋番号のインターフォンを押す。
出迎えた女の顔と着信表示の名前がそこでようやく一致して、ああこいつだったかと心の中で呟く。
抱きついて出迎えた女は顔もスタイルも人並み以上だったが、香水の匂いも含め、全てが人工的な感じがした。

/ 106ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp